第1話
―過ぎ去りしギアナにて………
掌門「ガンダムファイトは正しき道か………」
暗闇に響く声
それは闇の中で淡く灯る道標のようにも聞こえる
掌門「その答えをお主たち、姉弟に問いたい………」
掌門の前に座している二人の弟子
姉弟子「………………」
弟弟子「………………」
だが、二人の弟子からは答えは無い
掌門「ガンダムファイトも幾つもの大会が過ぎた………できれば私自身で答えを見極めたかったが………」
掌門の悲しげな呟きを遮るように答える姉弟子
姉弟子「ならば、私が師匠の目となりガンダムファイトを見てまいりましょう」
その言葉には掌門を労わる愛情と決意が満ちている
掌門「お前が行ってくれるか?」
姉弟子「はい」
弟弟子「では、私もお供を」
姉弟子「いや、お前は残って掌門のお世話を」
弟弟子に優しく言葉をかける姉
弟弟子「ですが………」
互いを思う二人の言葉に微笑み喜ぶ掌門
掌門「いや、そうしてもらえると助かる」
弟弟子「は………」
自分が先に任を受けて出れば…と恥ずかしげに納得する弟弟子
掌門「さぁ………これを授けよう………」
自分の拳を姉弟子の拳に重ねる掌門
姉弟子「………これは………」
掌門「少し早いかもしれんが、江湖を渡るにはあった方が良い………」
姉弟子の拳が輝き始め、その二人の拳を憧れの目で見る弟弟子
弟弟子「ぁぁ………」
姉弟子の拳に《キング・オブ・ハート》の紋章が輝いている
《天地天愕》
―これまでのあらすじ
ネオイタリアに現れるドモン
ネロスガンダムにシャイニングフィンガーを撃つドモン
後のシャッフル同盟となるチボデーたちとの戦い
その他、数々のガンダムと戦うドモン
新宿に現れるマスターガンダムとデビルガンダム
敵対する師匠・東方不敗
それらの光景に浮かび上がる《ストーカー》
ストーカー「皆さん、お久しぶりです。
ガンダムファイトが終わり、幾年が過ぎ去った事でしょう………。
そんな今、魔の13回大会と呼ばれる事になったガンダムファイトですが、
近年の再精査により、私も知らなかった様々な出来事が判明してまいりました。
そこで、今回はガンダムファイト国際委員会の許可の下に、こうして皆さんに改めてお話しさせていただく事になったのです。」
ギアナから脱出するシャッフル同盟の面々とレイン
その眼下で死闘を繰り広げるドモンと東方不敗
現れるゴッドガンダム
マスターガンダムを倒し、シャイニングガンダムを残してギアナを後にするドモン
軌道上のリングロープの反動でネオホンコンにゴールする
× × ×
東方不敗「ふん………」
ネオホンコン・ウォンの執務室
マスターガンダムの頭を模った遠隔操縦装置を外す東方不敗
ウォン「どうやら、ネオジャパンも含めシャッフルの全員がゴールしたようですね」
そこへ余裕のウォンが現れる
ウォン「で、いかがでした?かわいい愛弟子の成長ぶりは?」
東方不敗「はは………やはり遠隔操縦とコピー体のワシでは思うようにはいかなんだ」
ウォン「まぁ、しかたありませんか?何せせっかくの前回大会の優勝者としての狂権を発動して、新しい機体ゴッドガンダムとやらへの乗り換えを不問、としたのです。そのくらいの歯応えを見せていただかねば」
グラスにワインを注ぎながら笑うウォン
ウォン「ですが、デビルガンダムの本体をギアナに置いてきたのは少々問題です」
東方不敗「いや、案ずる必要は無い………あれには自己防衛の指示はだしてある」
ウォン「こちらもすでに捜索隊を差し向けてありますので、回収はすぐでしょう」
東方不敗「手間をかけたな………」
言いかけて、何かの気配に気づく東方不敗
咄嗟にバルコニーへ出て、ネオホンコンの夜景を見渡す
東方不敗「………確かに今!!」
ネオホンコンの夜景の中へ飛び出す東方不敗
ウォン「東方先生?!いずこへ?」
しかし、夜景の輝きに東方不敗の姿は消えていてる
ウォン「まぁ、いいか………好きにしていただこう」
余裕の笑みで見るウォン
ウォン「もうすぐこの100万ドルの輝きが永遠に私のものに………」
ネオホンコンの夜景が美しさに溢れている
× × ×
そのネオホンコンを背にするストーカー
ストーカー「そう………これが全てのファイターが目指した夢の舞台、
美しきネオホンコン………思えば長い道のりだったサバイバル・イレブン………
それを生き残ったガンダムファイターたち………」
世界各地のガンダムが立ち上がり、ネオホンコンへと向かう
ストーカー「彼らは決勝の地・ネオホンコンへ集結し、これから始まる一ヶ月の
決勝トーナメントを舞台に、世界の覇権を賭けて、戦って!戦って!戦い抜いて!
ガンダム・ザ・ガンダムの称号を手に入れよう!そう心震わせています。
ですが、開会式の閉幕と共に、ガンダムファイトの存亡を賭けた戦いが
巻き起こっていたのです。」
× × ×
ストーカー「そしてその相手は」
〜ネオアメリカ地上某所〜
朽ち果てたボクシング会場に立ち上がるボクサー
〜ネオフランス地上某所〜
古びた墓地の一角、その墓石に悲しげに寄り添う女性騎士
〜ネオチャイナ地上某所〜
無人と化した古寺、そのお堂の中で一人の僧が座禅をしている
〜ネオロシア上空〜
はるか上空の宇宙を漂い流れる宇宙服の男
ストーカー「ご覧の通りその眼光は怪しく輝き、あのネオエジプトの幽霊ファイターを思い出させる不気味さです」
〜ギアナ〜
ストーカー「そして中でも異様さを放つギアナの輝き………」
ガンダムヘッドの残骸が広がる大地。
その残骸の一部が蠢き、地下へと進んでいく。
やがて残骸は暗闇の中で一つの墓へと到達し、
更に一人の女の姿へと変化を見せる。
ストーカー「果たしてこの者たちの正体とは………?
そして、ガンダムファイトとどのような関係があるのか?
全てが謎のまま、戦いは一方的に始まろうとしています。
それに気づいているのは東方不敗、ただ一人………」
ネオホンコンの夜景を凝視する東方不敗
ストーカー「ですが、肝心のドモン・カッシュたちといえば………?」
少々困り顔のストーカー
●ネオホンコン・男人街(テンプル・ストリート)
一同「乾杯〜〜〜!!!」
グラスを鳴り合わせる一同
ドモンたちシャッフル同盟とそれぞれのクルーたちが男人街の屋台を囲んでいる
チボデー「くぁ〜〜〜!!たまんねぇ〜〜〜!!」
ビールを一気で飲み干すチボデー
その横でこっそりグラスを手にしているサイ・サイシー
瑞山「おっと、サイ・サイシーはこっち!」
サイ・サイシーのグラスを取り上げ、お茶と入れ替える瑞山
恵雲「さよう、お酒は大人になってからじゃ」
サイ・サイシー「え〜〜〜?!泡くらいいいじゃんか〜〜〜?!それに二人とも坊さんのくせして、お酒なんていいのかよ〜〜〜?」
瑞山&恵雲「はい、生まれついての生臭坊主でござるからして!!」
一同「ハッハッハッハッ〜〜〜!!」
同じく一気に飲み干す瑞山&恵雲を笑う一同
ジョルジュ「まぁ、皆さんあのギアナでの戦いを無事に生き延びたのですから、今夜くらいはお祝いという事で」
チボデー「おいおい、いつものお堅い騎士道はどうしたんだ?」
ジョルジュ「勿論大切に仕舞ってありますよ、あなたに汚されないようにね」
チボデー「言ってくれるぜぇ、その大事な騎士道を入れたカバンにしっかり鍵かけときな!でないとリーグ戦で俺にギッタギタに汚されちまうぜ?!」
ジョルジュ「いやいや、あなたこそ胸の星のマークがどこかへ流れ落ちないように気をつけてくださいよ」
チボデー「ほぅ〜〜〜??面白ぇ、何だったら今勝負しようぜ!」
ジョルジュ「いいでしょう!!」
二人「ならば、レディ・ゴー!!」
睨み合い一触即発の二人
× × ×
テーブルの上に転がる空のビールグラスとワイングラス
その前でバテてるチボデーとジョルジュ
チボデー「へっ…なかなかやるじゃねぇか?」
ジョルジュ「アルコール度数なら………ワインの方が上ですがね」
グデグデになりながらも張り合う二人
そこへ割ってはいるレイモンド
レイモンド「まあまあ、お二人ともそのへんで………」
シャリー「ほんと、たったの三杯で良くそれだけ酔っぱらえるものね」
レイモンド「とほほ………こんなお姿、マリアルイゼ様には見せられません」
アルゴ「全くだ………誰か俺の相手をできる者はいないのか?」
平然とウォッカをビン飲みしているアルゴ
バニー「すっごい〜〜〜」
キャス「でも危ないわね」
ジャネット「あれ絶対、突然落ちるわよ」
危なかしげに身を引いてアルゴを見るチボデーギャルズ
レイン「まぁ、いざとなったらドクターの私がお注射打ってなんとかするわ」
サイ・サイシー「え〜〜〜?アルゴのおっさんが倒れたら、そのまま海に転がしちゃおうと思ってたのに〜〜〜、そしたらリーグ戦で一勝もうけだもんね!」
レイン「そんな事したら、ネオロシアの怖いお方が鞭もって飛んでくるわよ」
サイ・サイシー「そ、それはちょっと………って、そういえばあの猛獣使い、じゃなくて軍人さんいないね?」
アルゴ「ああ、本国への報告に手間取る、と言ってた」
レイン「そうね………ギアナでの戦い………あんな事どう言っても、まともな報告にならないでしょうからね」
アルゴ「すまんな………ナスターシャが監視役を押し付けて」
レイン「ううん、倒れた私をギアナから連れてきてくれたんだから、お礼よ」
言いつつドモンを見るレイン
レイン「って、ドモン!!あなたどんだけ食べてるの?!」
これまでの会話の一切関心持たずに、ひたすら山になった皿を前に食べ続けているドモン
ドモン「そんな事………言ってモゴ………久しぶりのまともなメシなんだからモゴ」
レイン「久しぶり?まとも?それどういう意味?!」
ドモンに詰め寄るレイン
ドモン「意味も何も、メシ作ってたのはレインだろ?だったら」
レイン「待って、その先を言ったら、ぜっ〜〜絶〜〜〜」
怒りモードでドモンに迫るレイン
サイ・サイシー「あ〜〜〜あ、いつものやつだ!」
瑞山「知っとるぞ、絶交じゃな」
恵雲「絶交じゃ」
苦笑いでドモンとレインを見るサイ・サイシーたち
ドモンはキョトンと首を傾げる
ドモン「絶?絶?」
レイン「絶〜〜〜!!!!!!!」
怒鳴り上げようとするレイン
声「絶好調!だな〜〜〜!」
一同「?!」
レインの言葉を奪うように重なる声
その声の主を見る一同
シジーマ「さすがは今大会の優勝候補の御一行だ、開会式を前に仲良くお食事だとさ!」
声の主はネオインドのファイター《チャンドラ・シジーマ》である
更に連れ立っているのは、
ネオケニア《コンタ・ン・ドゥール》
ネオノルウェー《エリック・ザ・バイキング》
ネオオランダ《ルトガー・バーホーベン》
ネオスペイン《カルロス・アンダルシア》
の面々である。
チボデー「なんだ、なんだ?そっちこそ結構なメンバーで徒党を組んで何考えてやがる?」
突っかかるチボデー
シジーマ「おっと、ここでやりあう気はねぇぜ、何せあんたらはあのシャッフル同盟の御一行様でもあらっしゃる」
エリック「あぁ聞いているぞ、なんでも新宿とかでシャッフル同盟の代替わりがあった事を」
ルドガー「それがあんたらだ」
シジーマ「だが、どうにもわからねぇのが、シャッフル同盟ってのは直接世界の揉め事にちょっかい出さねぇ、って聞いてたんだが」
カルロス「それが今回、雁首揃えての参加」
ルドガー「何か計画でもあるならば教えていただきたい」
チボデー「うっ………」
シジーマたちの問いかけに言葉を詰まらせるチボデー
カルロス「いやいや、シャッフルは言わば秘密結社、外部の者にそれは無理」
コンタ「ならば我々とて対策を練らねば………そう思ってね」
シジーマ「って言っても、せいぜい情報交換が関の山、こうしてられるのも明日の開会式が始まるまでって事さ」
エリック「まぁ、シャッフルさんが何をしてくれるのか、期待させてもらうぞ!!」
ドモンたちに嫌味を言い捨て、去っていくシジーマたち
その背中を少し不安げに見送るドモンたち一同
ドモンたち「………」
チボデー「へっ………」
ドモンたちの沈黙を破るチボデー
チボデー「でもよ、誰もあいつらに言い返せねぇよな………」
ジョルジュ「ええ、考えてみれば私たちは突然何の説明もなく、この紋章を受け継いだのです」
サイ・サイシー「ホント………結局は何をすればいいのか?オイラたちみんな分かってないもんな」
不安げに自分の紋章を見るチボデーたち
アルゴ「いや、ドモン、お前は違うだろう?」
ジョルジュ「そうです、あなたは師匠の東方不敗から正式にキング・オブ・ハートの称号を譲り受けたのではありませんか」
チボデー「そうだよ、その時に色々聞いてるだろう?シャッフルの役目だとか掟とか」
ドモンに問いただす一同
ドモン「ああ………それがな………」
サイ・サイシー「それが?」
ドモン「俺も詳しくは聞かされていないんだ」
一同「はぁ??」
ドモンの意外な答えに拍子抜ける一同
ドモン「実は………師匠は第12回大会に優勝した後、突然ギアナに帰ってきて、いきなりキング・オブ・ハートを俺に譲ると言い出したんだ」
× × ×
〜回想〜
拳と拳を合わせるドモンと東方不敗
ドモンの拳に輝く紋章が浮かび上がる。
× × ×
ドモン「それからすぐに別れたままで………」
サイ・サイシー「じゃ、何も知らないのはアニキも一緒?」
ドモン「ああ……前々から聞いていたのは、シャッフルは《不介入》の立場から《世界の秩序を正す事》を目的とする事だけだ」
チボデー「なんだそりゃ??」
ジョルジュ「つまりは何もしてはならない………」
首を傾げる一同
サイ・サイシー「でも変だよ、東方不敗は12回大会にもキング・オブ・ハートとして出場してるんだよね?」
アルゴ「そして優勝までした………」
更に疑問を深める一同
レイン「それじゃ完全な掟破りじゃ………?それに新宿での先代のシャッフルたちは随分の怒り様だったわ」
サイ・サイシー「やっぱり12回大会で何かあったのかな?」
ドモン「あぁ………確かに優勝から帰ってきた師匠の様子は変だった………」
× × ×
キング・オブ・ハートの紋章をドモンに移す東方不敗
東方不敗「………」
慚愧に満ちた瞳が震えている
× × ×
ドモン「だがあの時、俺は何も問う事はできなかった………」
悲しげに思い出すドモン
その心境を察するジョルジュ
ジョルジュ「まぁこうなった以上、シャッフルに関しては少しずつ理解していくしかないでしょう」
チボデー「あぁ!そういうこったな!」
現状を吹っ切るチボデー
チボデー「とにかく明日は開会式だ!今夜はこれでお開きだ!!」
アルゴ「うむ!!」
ドモン「シャッフルの事は、わかった事があれば必ず知らせる!だから明日からのガンダムファイト、正々堂々良い試合をしよう!!」
一同「勿論だ!!」
勝利への決意を燃やす一同
× × ×
それぞれのクルーと共に解散していくシャッフルの一同
レイン「さぁドモン、わたしたちも宿舎に帰りましょう」
ドモン「あぁ………」
去っていく一同を少し心配げに見送っているドモン
ふと、何かの気配に気づく
ドモン「??」
周囲に異変がないかと、気配を窺う
ドモン「………………」
レイン「何してるの?早く行きましょ?置いていくわよ」
ドモン「ああ、わかった」
急ぎレインの後を追うドモン
レイン「もう、こんなところで迷子になったら最後よ、悪い連中に捕まって北京ダックにされちゃうんだから」
ドモン「なんだそれは??また変な漫画でも読んだのか??」
ふざけながら男人街の中に消えていく二人
だが、その二人をビルの上から見ている人影がある
人影「………………」
そこへ、屋台のテレビから流れるニュースに気が付く
人影「………?………」
ニュース「先日から、地上世界の各地で連続して起こっている《ある異変》に関しての続報です」
人影「!?」
突然何かの気配に気づく人影
見ると、男がビルの間を飛び駆けてくる
人影「!………やはり気付きおったか?だがお楽しみは明日!」
言い捨てて姿を消す
その姿を追いかけて来たように、男がビルの上に降り立つ
男「!!」
周囲には先ほどの人影の気配は消えている。
追いかけてきた男は東方不敗である。
東方不敗「ふん………間違いない………だが、思っていたより早かったな………」
ネオホンコンの夜景の中に佇む東方不敗
その姿にニュースが重なり聞こえる
ニュース「今回、
ネオアメリカの一時代を築いたスポーツ選手の記念公演、
ネオフランスでは歴史上のヒロイン、
ネオチャイナはある拳法の創始者のお寺、
ネオロシアでは世界初の偉業を遂げた飛行士、
それらの人物が眠る墓が荒らされ、その棺 がガンダムと思しき大きさのものと共に姿を消した、と目撃されています」
ニュース映像に映る各地の異変
●ネオホンコン・ウォンの部屋
私室でワイングラスを手に報告を聞いているウォン・ユンファ
ウォン「そうか………………うむ………うむ………」
× × ×
〜ギアナ〜
ネオホンコンのデビルガンダム回収調査隊が、ドモンたちの戦いの跡を調査している
ウォン(通信)「で、DG本体の残骸だけでなく、東方先生がギアナに残してきたマスターガンダムのコピーも見つからないのか………わかった、とにかく引き続き調査を………」
調査隊「うん??少々お待ちを………」
「あれはなんだ?」
「え??」
「あ………ああああ???」
突然混乱しだす調査隊
× × ×
ウォン「おい?どうした??」
突然の雑音と共に途切れる報告通信
ウォン「聞こえないぞ??どうした………おい!!」
通信「ぁぁああああ!!!!!!!」
悲鳴を最後に完全に切れる通信
ウォン「な……何があった?」
困惑のウォン
そこへ、突然バルコニーへの扉が開き、生暖かい風が吹き込んでくる。
4人の声「それは明日になればわかる事………」
ウォン「?!」
声に見ると、バルコニーに四人の人影が立っている
ウォン「誰だ?!どうやってガードを破ってきた?!」
慌てつつも、向かい立つウォン
四人の声「ガード?そのようなもの………我らの前には無意味である………」
× × ×
庁舎・ロビー
ミケロと保安員たちが倒れている
× × ×
「だが安心するが良い………お主に危害を加えに来たのではない」
「さよう………さよう………」
「ただ、少々手伝ってもらいたい事がある………」
不思議な響きでウォンに迫る声
ウォン「手伝う………??」
五人目の声「………いやとは言えぬぞ………」
ウォン「!?」
バルコニー外より現れる人影が、四人の中央に音も無く舞い降りる
ウォン「なんだこいつは………他の四人とは全く違う………??」
五人目の姿に身動きがつかず、心の中で様子を窺うウォン
五人目の声「なぁに………要は簡単な事よ………………それにお前のためにもなる」
ウォンに微笑み迫る
ウォン「ふうん………なら、少し興味が湧いてきましたよ………」
落ち着きを取り戻すウォン
ウォン「ですが………事によってはただではすみませんよ………」
不敵な笑みでバルコニーの遥か後方を見るウォン
チャップマン「………………」
後方のビルの上で、ライフルを手に鬼の形相で立っているチャップマン
五人目の声「なるほど………それなりの手練もいたか………」
ウォン「ですから、ここはまず話し合いという事で………」
五人目の声「まぁ、よかろう………」
笑みを浮かべ合う二人
× × ×
朝焼けが始まるネオホンコンの空
ストーカー「こうして、幾つかの謎と共に、開会式を前にしたネオホンコンの夜は更けてきました………
果たしてウォン・ユンファの前に現れた謎の五人は何者なのか?
そして、世界各地の異変との関係は?
どうやら全ての答えは開会式の閉幕と共に明かされるようです……」
赤く染まり出す東方の空
ストーカー「それではお待たせしました!
ガンダムファイト、レディィィイイ・ゴォォォオオオオオ!!!!!!」
ネオホンコンが朝日に包まれる
●開会式の終わり
燃え上がる聖火
声高らかに響くドモンと東方不敗、全ファイターの宣誓
全員「宣誓!我等ガンダムファイターは!この手にガンダム・ザ・ガンダムの栄誉を掴むため、己の技量の全てを持って戦い抜く事を、今ここに誓う!!」
ウォン「よろしい!ここに第13回ガンダムファイト決勝大会の開会を宣言する」
開会を宣言するウォン
その瞬間、ネオホンコンに五人の声が響き渡る
五人の声「そうはさせぬぞ!」
「何がガンダムファイトだ!!」
「この地で世界一の強き者を決めると聞いて来たのだが!見ればそれには及ばぬ者の
集まりよ!!」
「笑いが止まらぬわ!!!」
「はは!!」
「はは!!!」
「はは!!!!」
「ははははははははははははははは!!!!!!!!!!!」
一言一言が大きな波動となって開会式場に響き渡る笑い声
その圧力に思わず身を構え堪えるファイターたち一同
一同「な、なんだこの声の圧力は?!」
思わず身を伏せるシャッフルのクルーたち
クルーたち「ぁぁぁあああああ!!!!!!!」
レイン「重くて耐えられない!!」
重圧に潰されそうになるクルーたち
ドモン「こ…この声は?!」
笑い声に耐えつつ見るドモン
その視線の先に平然と立っている東方不敗を捉える
東方不敗「………」
ドモン「お、おい、あんた………この声に覚えがあるのか??」
東方不敗「ふん………これしきの圧力に抗えぬでは、まだまだよのう?」
侮蔑する東方不敗の笑みに突っかかるドモン
ドモン「何を!!」
東方不敗「ばかもの!!気をそらすでないわ!!」
東方不敗の言葉と同時にドモンに襲い掛かる圧力
ドモン「うぁぁあああああ!!!!!!」
集中する圧力に潰されるドモン
五人めの声「私の圧力に無防とは!!見事な弟子だな!東方不敗!!」
東方不敗「あぁ、アホゥで困っておるわ、それにもうワシの弟子ではない」
周囲を無視し、平然と言葉を交わす東方不敗
ドモン「やっぱりあんたの仲間か?!?!?!」
力を振り絞り立ちあがろうとするドモン
東方不敗 「バカもの!!奴らが来るのがわからんか!!」
咄嗟にドモンを打ち払う東方不敗
その瞬間、ドモンと東方不敗の間に突風が立ち上がり、
同時に巨大なコーナーポストが闘技場に降り突き刺さる
一同「ぉぉおおおおお!!!!!」
「な、なんだこれはぁああ!!!????」
その突風と振動に吹き飛ぶ一同
更に次々と上空から巨大コーナーポストが落下し、闘技場を円形状に囲み突き刺さる
チボデー「こ……こりゃあ一体………」
ジョルジュ「どうやらウォンの余興ではなさそうですね………」
アルゴ「あぁ、奴自身が腰を抜かしているからな」
腰を抜かし微かに震えているウォン
ウォン「あ………ああ??なんか、話が違うぞ………?」
ざわつきながらも落ち着きを取り戻そうとする一同
シジーマやコンタたちがガンダムから降り立ち集まってくる
シジーマ「おいおい、こりゃあ何なんだ?開会式は終わったんだろ?だったら解散していいよな」
エリック「ああ、なんだか知らんが、明日の試合の準備というものが………」
サイ・サイシー「みんな待って!危ないぞ!」
帰ろうとするシジーマたちを呼び止めるサイ・サイシー
同時にコーナーポストの一部が変形し、ビーム射出口が現れる
更に、発射されるビームが各コーナーポストを結び、式場全体が巨大な檻になる
シジーマ「な、なんだ?!」
不思議げに見るシジーマ
恐る恐る自前の蛇使い笛を差し出してみる
瞬間、燃え上がる笛
シジーマ「げっ!?」
よくみるとビームロープそのものが障壁を作り上げ、全体をドーム状に作り上げている
レイン「これはバリア??」
レインに駆け寄ってくるシャッフルのクルーたち
シャリー「どういう事??」
瑞山「ジョルジュ殿の言う通り、余興とは思えませんぞ」
レイモンド「さようですな、これではまるで我々を檻に入れたようなもの………」
ナスターシャ「アルゴ!!ガンダムで突破できないか?!」
コクピット内のアルゴに指示を出すナスターシャ
アルゴ「わかった!」
ボルトガンダムでバリアに触ってみるが、スパークと共に弾かれてしまう
アルゴ「だめだ!!」
チボデー「おいおい、それじゃ俺たち籠の鳥ってわけか?」
ジョルジュ「ですが、一体何のため?」
シュバルツ「それならば、これを仕掛けた者たちに直接聞くのが早いだろう!」
一同の中に割って入るシュバルツのシュピーゲル
シュバルツ「そこだ!!」
コーナーポストの上部に向けてゲルマン・クナイを投げる
しかし、クナイはその上部の中に吸い込まれ、次の瞬間、シュバルツに投げ返されてしまう
シュバルツ「ふん!」
微動だにせずクナイをキャッチするシュピーゲル
一同「ええっ?!」
驚く一同
声「なるほど………忍術の使い手がいるとは………」
「少々やっかいだな」
「まあ、それくらいの腕利きがいなくては興醒めというものだ」
「いやいや、悪いがあの者は対象外だ、手は出せぬ」
「あいや、それは残念」
「はははははははははははははははははは」
「はははははははははははははははははは」
「はははははははははははははははははは」
笑いあげる一同
ドモン「うるさい!!隠れてないで出てこい!!」
ドモンがゴッド・スラッシュの一撃を繰り出し、コーナーポストの上部を切り裂く
すると切り裂かれた部分は映像カモフラージュであり、消えゆく映像の中に2本の黄色いアンテナが見える
サイ・サイシー「ねぇ、あれって………」
アルゴ「ガンダム?!?」
ドモン「お前らは何者だ?!」
詰め寄るドモン
五人「慌てずとも教えてくれるわ!!」
「さよう!我等、長き歴史の裏側で!」
「この世の正義を正す者!」
「その名も気高き《ダーク・シャッフル》!!!!!!!!!」
それぞれのコーナーポストの上部が幽鬼のように姿を変え、5体のガンダムが現れる
だが、その姿はマントに包まれたままで、顔の一部が見えているだけである
続く……