第2話
●ネオジャパンコロニー
ウルベ専用オフィス
スクリーンのDGサインが点滅し消えていく
ミカムラ「消えましたな………」
ウルベ「ああ………」
DGサインの消失に肩を落とす二人
ウルベ「で?推測としてあなたの考えは?」
ミカムラ「はぁ………おそらくは第二段階にさしかかっていると………」
ウルベ「そのための休息地を求めての移動か………」
ミカムラ「デビルガンダムに関しては、まだわかっていない事が大半です………ですが、カッシュ博士が残したデータからは、そう考えるのが」
ウルベ「しかたあるまい………とはいえ、あなたがもう少し上手くやってくれてれば………」
ミカムラ「そんな!私は」
ウルベ「いやいや、わかっています」
興奮するミカムラをなだめるウルベ
ウルベ「とにかく今はアレが第二段階に成長するのを防がなければ」
ミカムラ「はい………」
神妙になる二人
●キヨミズ
ヤサカの道を登りくるドモンとレイン
その前に現れるキヨミズ
寺の崩れた柱だけが残っている
レイン「この辺はうまく爆発から逃れたらしいわね………でもキョウトも変わってしまったわ」
ドモン「おいおい、キョウトがこうなる前って言っても、俺たちは生まれてないんだぞ」
レイン「そりゃぁそうだけど、写真集なんかではずっと見てたのよ」
ドモン「京料理の?」
レイン「あなたと一緒にしないで!」
あっかんべをするレイン
レイン「でも、いくらコロニーに移築したからって、この風情までは持っていけないんだから………確かに大切なものは持って上がって、今じゃ残っているのは………」
ドモン「まあな………でもここにずっとあったら、それこそ環境汚染でダメになってたかもしれないんだぜ?このキヨミズみたいにな」
レイン「そうね………全ての原因は地球の荒廃………私たち人間の手によるね」
ドモン「ま、そういう事だ」
ふと想いに耽るレイン
レイン「でも、こんなキョウトでもいいから、ガンダムファイトじゃない時に来たかったわね」
ドモン「一人で?そりゃオツってもんだな」
レイン「………」
ドモンの言葉にイラッとするレイン
ドモン「うん?どうした?」
レイン「なんでもありません!」
手にしていたコントローラーを操作するレイン
目の前のオトワの滝の流が止まり、その裏に隠されていた扉が開く
レイン「ふん!」
足を早めて先に行くレインに首を傾げるドモン(鈍感)
ドモン「?????」
●補給庫
フロントから居住エリアに入る二人
ドモン「お〜〜〜こりゃすごいな」
中は一転して科学的に整備された空間が広がっている
保存食を手にするドモン
ドモン「キッチンに長期保存食もあるから、ちょっと休むにはいい場所だな」
レイン「もう、観光旅行じゃないんだから、早速補給のチェックよ」
ドモン「はいはい、鬼軍曹には逆らいません」
補給庫へと向かう二人
× × ×
レイン「すごいわね………」
武器スタンドに並んでいるガンダム用の巨大な武器の数々
《刀》《剣》《戟》《斧》《鞭》《錘》《棍》《長槍》《飛刀》《峨嵋刺》《圈》
レイン「なんかどれも痛そうなのばかり………でも、これだけあれば結構なパワーアップになるわね」
ドモン「あぁ………」
あまり興味を示さないドモン
レイン「どうしたの?興味なさげだけど」
ドモン「いや、そんな事はない………でもな、流派東方不敗は基本的に武器を使わないんだ」
ふと言い直すドモン
ドモン「いや、好まないって言うほうがいいかな?」
レイン「好まない??」
ドモン「ああ……と言っても使えないって事じゃないんだ、だから一通り習得はするんだけどな………で、その中から一つを選んで常備する………」
レイン「そういえば地球に来る前にもシャイニングガンダムには武器はいらないって言ってたわね」
ドモン「あぁ……でもウルベ少佐がうるさくってな………まあ、俺は武器修行で刀を選んだし、日本刀のビームソードはネオジャパンのガンダムの伝統だっていうから、シャイニングガンダムに搭載したんだ」
レイン「ふぅん………でもどうして、流派東方不敗は武器嫌いなの?」
ドモン「うん………俺たちの流派の基本は何よりもこの拳なんだ」
拳を見つめるドモン
ドモン「武器は最後の手段………まずは生身の拳で相手と語れ、己の心を拳に込めて敵を撃つ!それが流派の始まりであって目指し行き着くところ………!!」
自信に溢れつつも、顔を引き締めるドモン
レイン「生身の拳で相手と語れ………でも相手が武器を持っていたら?」
ドモン「それを見せてくれたのが、師匠との出会いなんだ」
懐かしげに語り出すドモン
●東方不敗との出会い
ギアナのふもと
その中をある建物を目指して進む一隊
建物は閉鎖中の研究所であり、一隊は案内人を先頭にした科学者一家である
メンバーは《カッシュ博士》《キョウジ》
そして幼き《ドモン》である
× × ×
ネオジャパンコロニー
ドモンの家にくるレイン
レイン「カッシュのおばさん!ドモンいる?!遊びに来たの!!」
ドモンの母「それがね、ドモンいないの」
レイン「いないって?」
ドモンの母「地球に行ったのよ」
レイン「え〜〜〜??あんなところに??」
ミカムラ「それじゃぁ、カッシュ君と一緒に??」
遅れて入ってくるミカムラ
ドモンの母「ええ、どうしても一緒に行くって」
苦笑いのドモンの母
ドモンの母「主人もドモンに地球の様子を見せておくのもいいだろうって」
ミカムラ「なるほど、自然科学者らしい育て方だ」
ドモンの母「だから、帰ってくるのを待っててね?レインちゃん」
レインにしゃがみ込んで微笑むドモンの母
× × ×
〜現在インサート〜
レイン(現在)「覚えてる!!だってあの日からドモンがずっといなくなったんだもの!」
ドモン(現在)「ああ、俺もまさかコロニーに戻らないなんて思ってもみなかったからな」
レインに苦笑いで答えるドモン
× × ×
ギアナ
研究所を目指し進む一隊
カッシュ「それで、あとどのくらいで着きますかな?」
案内人「もう少しです、ほら、あの丘を越えれば見えますから」
小高い丘を指差す案内人
案内人「しかし、到着しても気を許さずに、早々にセキュリティを動かしてくださいよ、私が帰った後は自分で身の安全を守るしかなくなりますからね」
背中で眠っているドモンに微笑む案内人
案内人「こんな小さい子は特に気をつけてなければ」
キョウジ「ありがとう、でもそんなに危険な場所には見えないけど」
カッシュ「ああ、出発前に国が安全な場所として選んだんだが」
案内人「いや、それがです………ここ最近なんです、危なくなったのは」
苦笑いの案内人
案内人「来るんですよ、秘宝ハンターのような泥棒連中が」
キョウジ「秘宝??」
案内人「ええ、ちょっとした噂が広がったらしくて、それを目指してね」
カッシュ「ほう、それはどう言ったものですかな?」
案内人「なんでも《東方の珠》とかいうもので」
カッシュ「珠??」
キョウジ「それはどんな」
案内人「東方不敗………聞いたことは?」
カッシュ「ええ、噂の程度ですが」
案内人「その流派の掌門とやらが持つ宝だそうです………で、その掌門が留守をしていたこのギアナに帰ってきたとかで」
カッシュ「では、それを狙って?」
案内人「しっ………」
歩みを止める案内人
キョウジ「??」
カッシュ「??」
案内人の指示で続けて歩みを止める二人
案内人「………………」
周囲の様子をうかがう案内人
黙って背中のドモンをキョウジに渡し、茂みの中に入っていく
案内人「………」
少しの間の後
カッシュの前に気絶した二人の男が倒れ込む
カッシュ「これは?」
案内人「さっき話した賊です」
カッシュ「だが、私たちを狙っても意味はないのでは??」
案内人「ええ、ですから私の持つ珠を狙っているのです」
キョウジ「そ、それじゃ?」
案内人「はい」
頷き、案内人の装備を脱ぎ捨てる男
《東方不敗》本人である
東方不敗「申し訳ない………私の帰還とあなたたちの来訪が重なってしまい、私の巻き添えになる危険性がありましてね、それに案内人としてなら、連中の目もごまかせるかと、少々あなたたちを利用させていただいた」
カッシュたちに抱拳する東方不敗
東方不敗「申し訳ない………ですが………」
丘の上を見る東方不敗
賊たちが集まってきている
その中から刀掛けを運び来る手下
刀掛けにはさまざまな武器が立てられている
賊の頭「……」
賊の頭がその中から一本の刀を手にする
東方不敗「あなたたちの安全は保証いたします、ですからここを動かないように」
キョウジ「えっ?!」
賊たちに向かって走り出す東方不敗
東方不敗「!!!!!!!」
キョウジ「そんな!一人で?!」
追い見るキョウジ
ドモン「???」
周囲の気配に目を覚ます幼いドモン
その目には一人で丘を駆け登る東方不敗の背中が見える
賊の頭「我らに一人で挑むとは、さすがは東方不敗!!」
刀掛けから各々一つの武器を手にする賊たち
賊の頭「受けてみろ!!我らが十方陣!!」
賊たち「おおーっ!!!」
一斉に散開する賊たち
東方不敗「ふん!!雑魚どもめが!!」
襲い来る一番手の《剣》を二本の指で挟み取り上げる
賊1「あぁ!?」
剣を放り投げると同時に東方不敗の拳が、賊1に振り下ろされる
賊1「ぐぁあ!!」
倒れる賊1
同時に放り投げられた剣が空になっている刀掛けに戻り立つ
賊2「このぉ!!」
同じく両手の《戟》で速攻を繰り出す賊2
東方不敗「ふん!!双戟とは片腹痛い!!」
戟の隙間を縫って賊2の顔面に拳を入れる東方不敗
そのまま賊の両手を打ち払い二対の戟を投げ上げる
[!!]
[!!]
小さな金属音と共に刀掛けに戻る戟
続けて斧で襲い来る賊3を蹴りで打ち返す
東方不敗「斧の重さに力負けがわからんか!!」
[!!]
同時に斧も刀掛けに戻る
東方不敗「一人一人は面倒だ!!全員で来んかぁああああ!!!!」
賊たち「おのれぇえええ!!!!!」
東方不敗を囲むように四方から一斉に襲い掛かる賊たち
《鞭》《錘》《棍》《長槍》《飛刀》《峨嵋刺》が一斉に振り下ろされる
カッシュとキョウジ「危ない!!」
ドモン「あぁ………」
その様子を驚き見るカッシュとキョウジ
だが、ドモンの目には、
《峨嵋刺》を持つ手を捻り上げ、
《飛刀》を跳ね返し
《長槍》を踏み折り
《棍》の背後に跳躍し、背後からその動きを止め
《鞭》《錘》の動きを合わせ誘い、双方の賊に同士討ちをさせる
その東方不敗の動きの全てが見えている
東方不敗「ふぅん!!!!!!」
最後に一塊となった賊たちが倒れると共に、一斉に武器が飛び上がり、刀掛けに全ての武器が元通りに収まり立つ
ドモン「すごぉい……」
憧れの眼差しで東方不敗を見るドモン
と、その瞬間、キョウジの手からドモンを奪い去る賊の頭
キョウジ「ドモン!!」
賊の頭「ははははははははは!!やはり我らの腕では勝てん勝てん!!」
宙を駆けるような凄まじい速さでその場を離れる賊の頭
賊の頭「かくなれば、この小僧と珠を交換に」
振り向き言いかけた瞬間、東方不敗が弾丸のように迫り来る
東方不敗「ばかめ!!」
言い放つと同時に賊の頭を蹴り飛ばしている東方不敗
賊の頭「…!…」
倒れる賊の頭
起き上がると共に、ドモンに向けて刀を向ける
賊の頭「これでも!!」
再び言いかけた瞬間、一本の布が宙を飛び来る
瞬間、賊の頭の刀に巻きつき、東方不敗の手へと奪われてしまう
賊の頭「な、何??」
東方不敗「愚か者めが!!」
賊の頭を殴り飛ばす東方不敗
賊の頭「!!!!!」
ドモンを抱き上げ、受け止める東方不敗
東方不敗「大丈夫か?!怖くはなかったか?!」
ドモン「う………うん………」
東方不敗「ならば良し!!」
布に巻かれた刀を宙に投げる不敗
[………!………]
静かな音と共に刀掛けに収まる刀
全ての武器が元通り刀掛けに収まっている
●〜現在〜
補給庫の中のドモンとレイン
レイン「布一本で刀を………」
ドモン「ああ、師匠は布を使って戦う事を得意にしていたんだ………」
レイン「でも武器を相手に、そんなもので??」
ドモン「師匠はその布に自分の力を流し込むんだ、そしてそれを拳として撃つ!こんなふうにな!」
一瞬でハチマキを外し、同時に手にしていたボトル放り上げ、そのボトルにハチマキを巻き付ける
そのボトルを手に戻すハチマキ
レイン「すごい!!」
ドモン「はは、俺はちょっと苦手でこの程度だけど、師匠だったらボトルは粉々になってたな」
レイン「でも、それだって武器じゃ………??」
ドモン「いや、普通の武器とは違って、布自体に拳を通して自分の力を注ぎ込む、つまり布を自分の体の一部にするんだ」
レイン「自分の体の一部にする………」
ドモンたちの武術を理解しようとするレイン
ドモン「あぁ………それを見たのが師匠と俺の出会いであって、弟子入りのきっかけだったんだ………」
懐かしげに語るドモン
●流派東方不敗への弟子入り
夜
無人の研究所へ到着している一行
東方不敗「いやはや、危険な目に合わせてしまって申し訳ありませんでした」
カッシュ「いえいえ、我々だけでは襲われてどうなったかわかりません」
応急システムに照らされた居住区で寛いでいる二人
東方不敗「それより、あのドモン君の事ですが」
カッシュ「全く気まぐれも甚だしい………突然弟子になりたいだなんて」
寝室エリアで寝ているドモンを見るカッシュ
キョウジが付き添っている
カッシュ「今回は地球の様子を見せようと思って連れてきたのですが、全く………」
呆れているカッシュ
東方不敗「それがですな………私も弟子に………と思っているんです」
カッシュ「はぁ?」
東方不敗「いや、勿論そちらが良いと言うのならですが………」
少し考える東方不敗
東方不敗「案外素質があるのかもしれません………と、言うのもあの時………」
× × ×
〜回想〜
賊の頭を倒す東方不敗
そこへ駆けつけるカッシュとキョウジ
東方不敗の腕から飛び降り、カッシュたちに駆け寄るドモン
ドモン「見た見た?!今のすごかったよね!!」
カッシュ「ああ、おかげで助かったんだよ!」
キョウジ「ありがとうございます!!僕がもっとしっかりドモンを」
東方不敗「いや、あんな下郎でも結構な手練………武術の心得がなければ防ぐ事は」
キョウジに微笑む東方不敗
ドモン「でもさ!」
カッシュとキョウジに身振り手振りを始めるドモン
ドモン「最初の剣は指で、こう、受けてとばして、次の変なのは隙間をびゅっ!っと一髪!で斧は相手がふらついたところをこんなふうに!!」
東方不敗「??」
ドモンの身振りを見る東方不敗
ドモン「それで、後の人たちの武器はこうして、こうして、それで続けて!」
東方不敗の戦う様を、つたない身振りで説明するドモン
しかし、その動きは的確に東方不敗の動きをトレースしている
東方不敗「この子は………今のわしの動きを見ただけで………」
ドモンに興味を抱く東方不敗
× × ×
カッシュ「ほぉ………あの子がそんな………」
キョウジ「確かに、僕たちはただ見ていただけで、再現や説明なんて無理です………それをあの歳で………」
不思議がりつつ二人のそばに座るキョウジ
東方不敗「いや、ゆっくり考えてくださればいいのです………ただ、非常に有望である事は間違いないでしょう………ちょうど私も流派の今後のためにも弟子を取らねば、そう思っていたのも本当ですし」
微笑むカッシュ
キョウジ「ま、あいつは一度言い始めたら………ね、父さん」
カッシュ「うん…そうだな………とりあえずは………」
キョウジの言葉に頷き思案するが、やがて考えをまとめるカッシュ
カッシュ「今回の調査が終わるまでは、このままで」
東方不敗「勿論それで結構です……と、そういえば、お二人はここへどのような調査で?あ、逆に私のような者が難しい科学の話を聞いてもわかりませんがね」
話を一転させ、二人の研究に興味を抱く東方不敗
カッシュ「そんなことはありませんよ、簡単な研究です………」
少し神妙に話し出すカッシュ
カッシュ「あなたは、このギアナの様子をどうご覧になります?」
東方不敗「どう………?と言われましても」
カッシュ「私の目には美しい自然に溢れる素晴らしい世界です」
一転して顔を曇らせる
カッシュ「だが、それは同時にこの世界に残ったわずかな大自然でもあるのです」
東方不敗「………」
カッシュ「人類はこの地球を汚し続けました………その結果、コロニーを作り上げ、一種のエリートたちが宇宙へと脱出し、後に残った人類はこの汚れた世界に住み続けることしかできない………その結果、地球の自然は衰退する一方………私はこのままで済ませてはいけない!そう思うのです」
言葉に怒気が含まれるカッシュ
カッシュ「そこで、こんな時代になっても力強さを持ち続ける、ギアナの自然を元にして環境汚染と戦う方法を考えたいのです」
東方不敗「戦う方法?」
カッシュ「既に基本の考え方はできているのです!」
怒気を収め微笑むカッシュ
カッシュ「アルティメット3大理論!」
東方不敗「それは…一体??」
カッシュ「《自己再生》《自己増殖》そして《自己進化》!!
この三つの力を地球に与え、この世界に溢れる緑を取り返すのです!」
東方不敗「このギアナのような?!」
カッシュ「ええ!!」
東方不敗「それは素晴らしい!!わが流派にとってもギアナは大切な故郷!その姿が地球に溢れかえるとは!!」
喜ぶ東方不敗
東方不敗「ならば理論の完成!!私もその日が来るのを楽しみにさせていただきましょう!!」
カッシュ「是非!!」
握手し、意気投合する二人
その様子を微笑み見ているキョウジ
キョウジ「………………」
続く……