第5話
●キョウトの異変
プロトタイプ・ライジングの目が輝き起動を始める
レイン「いいわ!整備はできてる!」
モビルトレースシステムの確認をするコクピット内のレイン
ドモン「なら、今後は二体で移動するか?」
レイン「そうね、できれば武器も全部持っていきたいし」
双戟を手にするプロトタイプ・ライジング
自信無さげに構えて見る
レイン「これでいいのかしら??」
ドモン「いや、戟はもっと………」
言いかけたその時、警告音が鳴る
[!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!]
ドモン「なんだこれは?!」
レイン「警告サインよ、調べて見るわ」
スクリーンのカメラを外部に切り替えるレイン
キョウトの状況が映し出される
レイン「別に変わったところは………うん?」
アラシヤマ方向に反応サインが現れ、拡大される
レイン「待って………これは??」
× × ×
倒れていたネオドイツの兵士ガンダムが、バランスを取りつつ立ち上がろうとしている
× × ×
レイン「そんな!!」
更に拡大された映像に驚くレイン
兵士ガンダムにDG細胞が蠢いている
レイン「DG細胞で再生している!!」
ドモン「なんだって!?」
追いかけてスクリーンを操作するドモン
キョウトの地図データに変わり、DGサインが映し出される
ドモン「これ全部がデビルガンダムの?!?」
無数に増えていくDGサインに驚く
× × ×
一方のキョウジとブルーダーもその異変に気づく
ブルーダー「どうした?!一体なんだ?!」
キョウジ「こ………この感触は??デビルガンダムの!?!」
手の異常な感触を確かめるキョウジ
その瞬間、二人の背後に立ち上がるDG兵士ガンダム
DG兵士「!!!!!!!」
二人に襲い掛かろうとする
キョウジ「まずい!!」
再生を終えていない足で立ち上がろうとするキョウジ
ブルーダー「慌てるな!!」
キョウジを止めるブルーダー
キョウジ「でも!」
DG兵士「!!!」
言いかけたその瞬間、DG兵士ガンダムが真っ二つになる
キョウジ「ぇえ?!」
驚くキョウジ
両断されたDG兵士ガンダムの後ろに現れるシュピーゲル
キョウジ「このガンダムは………」
ブルーダー「私のガンダムシュピーゲルだ!!そして今のが!」
キョウジを背負い、コクピットに入るブルーダー
ブルーダー「ゲルマン忍法!隠れ蓑の術!!」
透明になっていくシュピーゲル
キョウジ「なんと………ステルスか!」
ブルーダー「まずは、この中で様子を見る」
スクリーンを操作するブルーダー
キョウト中のDGサインがキヨミズに向かっている
その中央にネオジャパンのガンダムサインがある
キョウジ「これはネオジャパンのサイン!!まさかドモンか!?!」
驚き焦るキョウジ
ブルーダー「なんと、君の弟がこのキョウトにいたとはな………」
キョウジ「まただ!……また恐ろしい偶然だ!!だが、今度はそれを好機にしてやる!!」
這い上がりコクピットから出ようとするキョウジ
キョウジ「待ってろドモン!!今私が助けに!!」
それを止めようとするブルーダー
ブルーダー「無理だ!その体で何ができる?!」
キョウジ「頼む!!弟を!ドモンを助けに行かせてくれ!!」
ブルーダー「だめだ!!今の話では弟のドモンは君を憎んでいる!!そんな君が今デビルガンダムと共に現れては、火に油だ!!」
キョウジ「だが!!」
ブルーダー「わかっている!君の弟を思う気持ちは私には嫌と言うほどわかってる!!」
キョウジ「え?」
ブルーダー「私も………私も弟を救うために、このガンダムファイトに出たんだ………」
キョウジ「あなたも………??」
ブルーダー「………………」
悲しげに頷くブルーダー
●ブルーダーの過去
ブルーダー「私にはな………双子の弟がいたんだ………」
幼い頃の双子のブルーダー
ブルーダー「生まれた時からずっと一緒でな、仲も特別良かった………そして二人とも幼い頃からネオジャパンの忍者というものが好きでな、よく双子で分身の術、なんて遊んでいたもんだ………」
忍者ごっこで遊ぶ双子のブルーダー
ブルーダー「だがコロニー時代になった今は、互いの国の文化や情報は秘匿される事が多くなり、忍者に関する情報も入手しづらくなった………結果私たちはネオドイツに残っていた古い映画や書物、コミックから情報を得る事くらいしかできなかった………」
映画やコミックを一心不乱に見ている双子のブルーダー
ブルーダー「でも、今思い出しても面白かった………」
手裏剣を作る二人
忍者の真似をして手裏剣を投げる
パイプを加えて水中を泳ぐ二人
木の棒を刀にしてチャンバラをする二人
ブルーダー「強くて正義のために戦う忍者!勿論、悪い奴もいる!」
倒れたふりをして、突然斬りかかる
片方が悪辣な大笑いをし、もう一人は悔しがる
ブルーダー「そして、こんな術を使える者が本当にいたんだと憧れたんだ………だから大きくなっても私たちは忍者が大好きだった………」
成長していく二人のブルーダー
ブルーダー「そんな頃、弟が面白い事を思いついたんだ」
× × ×
弟ブルーダー「兄さん、俺たちで忍法を作ろうよ!!」
兄ブルーダー「何だって??」
弟ブルーダー「兄さんはスポーツに長けている!だから本物の忍者のように体を鍛えるんだ!そして僕は得意の科学で忍者の術を研究する!!」
嬉しげに語る弟ブルーダー
弟ブルーダー「そして、二人の得意を兄さんが併せ持つんだ!!」
兄ブルーダー「なるほど………それは面白いかも!!」
弟ブルーダー「だろ!!」
× × ×
〜現在〜
ブルーダー「そして、私たちはいくつものスポーツを基礎にして、様々な忍者らしい動きをプラスして、それを術として名前を付けていったんだ」
懐かしげに語るブルーダー
キョウジ「それじゃさっきのステルスは?」
ブルーダー「あのシステムは弟が発明したんだ」
キョウジ「弟が…?」
ブルーダー「ああ!」
誇らしげなブルーダー
ブルーダー「科学者になった弟は、その科学で忍術を実現していったんだ!」
× × ×
〜過去〜
誇らしげに肩を組む二人のブルーダー
ブルーダー「そして完成したのが私たち二人のゲルマン忍法だ!!」
弟と背中を合わせ構えをとるブルーダー兄
× × ×
ブルーダー「はは、おかしな名前だろ?」
苦笑いのブルーダー
ブルーダー「最初は何をやってるんだ?と皆から散々に笑われたものさ………」
キョウジ「だが………さっきのあなたの動きは本物だ」
感心するキョウジ
ブルーダー「ああ、みんなもいつしか私たちを笑わなくなったよ」
× × ×
〜過去〜
様々なスポーツの大会
相手を打ちのめすブルーダー兄
相手を空気投げのように回転させる
剣で打ち合う試合で瞬殺の速さで勝利する
ブルーダー(現在)「私たちの忍法は無敵だった………」
大会で優勝しているブルーダー兄
ブルーダー(現在)「だが、ある日……ボルダリングを使っての新しい術を考えていた練習で弟は………」
ボルダリング施設
高所から落ちかけるブルーダー兄
弟ブルーダー「あぶない!!」
手を伸ばす弟ブルーダー
しかし、咄嗟に弟も手を滑らせてしまう
その高所から落下するブルーダー弟
駆け降りる兄
ブルーダー(現在)「全ては私の責任だ………」
病室で寝ているブルーダー弟
ブルーダー(現在)「なんとか命は助かったが、弟は全身不随………それだけじゃなく、呼吸も思うようにできなくなり………治療の方法もなく、このままでは………」
弟を前に祈っているブルーダー兄
ブルーダー(現在)「そこへガンダム委員会の連中がやってきたんだ」
委員会のメンバーと病室から出るブルーダー兄
キョウジ(現在)「もしかして」
ブルーダー(現在)「そうだ………ゲルマン忍法の噂を聞いた連中は、私にガンダムファイトに出ろと言ったんだ」
首を振るブルーダー兄
ブルーダー(現在)「勿論私は断った。弟をおいて地球などに一年も行く事なんてできない!すると………」
一冊の計画書をブルーダーに見せる委員会
ブルーダー(現在)「もし、優勝すればネオドイツの新技術、サイボーグ手術で弟を救ってくれると交換条件を出してきたんだ」
驚くブルーダー兄
ブルーダー(現在)「そして勿論、引き受けた!!」
意識のない弟に語りかけるブルーダー兄
ブルーダー(現在)「サイボーグでもなんでもいい!ただ………ただ弟に生きていて欲しかった!!」
希望に溢れるブルーダー兄
ブルーダー「そして約束をしたんだ!!二人のゲルマン忍法で優勝してみせると!!」
弟の手を握り祈る兄
× × ×
〜物語の始まりに戻って〜
ブルーダー(現在)「だが!!」
大戦艦ビスマルクを襲うシュピーゲル
荒廃したキョウトの地に轟く砲撃音
その着弾により、轟音と共に破壊される街
司令官「撃て!!!撃てぇえええいいいいい!!!!!」
激震するブリッジで指示を出す司令官
連射する対戦車砲
司令官「やったか!!」
爆炎の中に姿を消したシュピーゲルの姿を追う司令官
だが次の瞬間、突然シュピーゲルが眼前に現れる
司令官「うぁぁああああああ!!!!!」
ブリッジに取り付くシュピーゲル
ブルーダー「よくも!!よくも私を騙してくれたなぁぁあああ!!!!!」
ブリッジに向かって拳を構えるブルーダー
× × ×
〜現在〜
ブルーダー「そうだ!!奴らは私を騙したんだ!!」
怒りを込めて拳を握るブルーダー
キョウジ「??」
ブルーダー「ネオドイツにはサイボーグ技術など無かったんだ!!」
キョウジ「そんな!!」
驚くキョウジ
ブルーダー「司令官のところへ今朝、弟の訃報が入った………そしてその時に知ったんだ」
× × ×
〜過去インサート〜
報告を聞いている司令官
司令官(過去)「はい………わかりました………ブルーダーにはこのことは伏せておきます………そうすればありもしないサイボーグ技術を信じて奴は戦い続ける事でしょう………」
ブルーダー(過去)「!!!!!」
偶然部屋の前を通りがかり、聞こえてしまうブルーダー
× × ×
ブルーダー「奴らは私をガンダムファイトに出場させるために私を騙した!!弟をサイボーグ治療するなんて真っ赤な嘘だったんだ!!そして弟は死んだ!!!」
涙を流し堪えるブルーダー
ブルーダー「だからもういい!!こうなったらどうでもいい!!私は復讐としてネオドイツの戦艦を叩き潰そうとした!!すると!」
× × ×
〜過去インサート〜
突然地中から大地を割って現れる巨大な影
ブルーダー(過去)「な、なんだこいつは!!!」
恐怖に固まるブルーダー
巨大な影は《デビルガンダム》第一形態である
× × ×
ブルーダー「その後に…君を見つけた………」
キョウジ「………………」
唖然となっているキョウジ
ブルーダー「だからわかるんだ………君の弟を思う気持ちがな………」
キョウジ「私にもわかる………あなたの気持ちが分かる!!!!!」
肩を組み慟哭する二人
●キヨミズの対決
〜ウルベのオフィス〜
スクリーンにキヨミズに向かって集結するDG反応
ミカムラ「なんという数だ?!」
ウルベ「どうやらDG感染が広がっているみたいだ………」
スクリーンが切り替わり、再生しつつ立ち上がるネオドイツの兵士ガンダム群
ミカムラ「見てください、これはさっきの大爆発を起こしたネオドイツのサポート軍のもの………」
ウルベ「いや、それだけじゃない」
更に切り替わるスクリーン
立ち上がるガンダムを指し示すウルベ
ウルベ「この機体を見てください」
ミカムラ「うん………??これは確か…前大会のネオアメリカの機体では??」
ウルベ「そうです………東方不敗は何故かこのキョウトに居座り、通りがかるファイターたちにファイトを仕掛けていたんです、まるで五条大橋のベンケイみたいに………」
ネオフランス、ネオロシア、ネオオランダ、ネオカナダと様々な前大会ガンダムたちが立ち上がる
ウルベ「敗北したそれらのガンダムはこのキョウトに放置されたまま………そして今デビルガンダムの力で」
ミカムラ「するとまさか??」
ウルベ「最悪の事態になり得るかも………」
立ち上がろうとする一体のガンダムのシルエット
前回大会の《ウルベガンダム》である
× × ×
キヨミズに迫るDGガンダム群
その様子を地下補給庫のスクリーンで見ているドモンとレイン
ドモン「すごい数だ………」
レイン「どうやら私たちのガンダムに反応しているらしいわ」
ドモン「だとするとまずいぞ!!」
ドモンが気づくと同時に警告音が鳴り響く
レイン「これは?!」
見ると地下へ向かってDGサインが侵入してくる
レイン「DG細胞がそこまで来てる!!」
ドモン「急げ!!」
それぞれのガンダムに向かう二人
そこへ補給庫のコントロールマシンなどから現れるDG触手
追いくる触手から逃れ、それぞれコクピットに入る二人
レイン「私たちのガンダムはDGワクチンでコーティングしてあるから大丈夫!!」
ドモン「全く、せっかくのまともな食糧を食べずのままか!!」
レイン「もう!何言ってるのよ!!後で私がなんとかするから!!」
ドモン「それはごめんだ!!」
ガンダムを起動させつつ言い合う二人
ドモン「出るぞ!!」
× × ×
キヨミズの残骸を跳ね上げ、地上に出てくる二人のガンダム
レイン「どうやらこの武器を使わないとダメみたいね」
持ってきた武器スタンドに手を伸ばすプロトタイプ・ライジング
ドモン「俺はこいつを持ってきた」
シャイニングが一本のタスキを手にする
ドモン「タスキスラスター!結!!」
掛け声と共にタスキを体に結ぶシャイニングガンダム
レイン「あら?武器はパスって言ってたのに?」
ドモン「背に腹は変えられん!」
レイン「じゃ、こっちもあげる!!」
ドモン「おう!!」
プロトの投げた戟を手にする
レイン「私はまず圈とこれを!!」
圈と双鈎を握るプロトライジング
二人に迫るDGガンダムの大群
レイン「来たわ!!」
ドモン「行くぞ!!」
武器を手にDGガンダム群に突入する二人
ドモンとレイン「ぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!!!」
戟でDGガンダムを薙ぎ払い、更に叩き伏し、そして弾き飛ばして、最前線に広場を作るシャイニングガンダム
そこへプロトライジングが圈を地面に投げると、シャイニングを中心に輪を書き走る
更に、輪の中に残っていたDGガンダムを、双鈎の曲がった鉤の部分で引っ掛けて、輪の外へと投げ捨てる
ドモン「よぉし!俺はこの土俵で戦う!!」
DG「!!!!!!!」
襲い来るDGガンダムたち
ドモン「ぅぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!!」
戟を奮い次々とDGガンダムを跳ね飛ばしていくシャイニングガンダム
一方のレインも双鈎を奮いDGガンダムを引っ掛け振り回し、他のDGガンダムに叩きぶつける
更に持ち手の月牙で相手の首を切り裂き、その内部に鉤を入れ、内部のメカを引きずり出す
ドモン「いいぞレイン!!こいつらの拳には魂がない!!好きなように武器を使いまくれ!!」
レイン「もうやってる!!」
その瞬間、双鈎が敵の棍棒に折られてしまう
相手はネオカナダの前代表ガンダムである
レイン「ちょっとは歯ごたえのあるのが来たわ!」
急ぎ武器スタンドに戻るレイン
レイン「じゃあ次はこれで!!」
《峨嵋刺》を手にするプロトライジング
同時にドモンの戟が弾かれ、相手の前ネオオランダDGガンダムに奪われてしまう
ドモン「レイン!俺にも頼む!」
レイン「じゃあこれ!!」
2本の《錘》を投げ渡すレイン
受け取り構えるシャイニングガンダム
ドモンとレイン「かかってこい!!」
背中合わせに構えるドモンとレイン
× × ×
遠方のドモンたちの戦闘に気づくキョウジ
キョウジ「始まったのか………」
同時にブルーダーの腹から血が流れているのに気づく
キョウジ「!!!」
ブルーダー「ああ……見ての通りだ………」
苦笑いのブルーダー
ブルーダー「すまないが………私では役に立てそうにない………緊急処置でなんとかでき
ると思ったが、さっきの奴を倒した時に傷口が開いたらしい………」
苦しげに座り込むブルーダー
ブルーダー「さすがは東方不敗だ………こんな深手をくらったのは初めてだ………」
朦朧とし始めるブルーダー
ブルーダー「だが安心しろ………私にいい考えがある………」
キョウジに微笑み頷くブルーダー
× × ×
倒れる前ネオオランダと前ネオカナダのDGガンダム
ボロボロになった鍾を捨てるシャイニングガンダム
ドモン「やったか!」
レイン「ちょっとしぶとかったわね」
肩で息をするレインはそうとうバテている
その瞬間、レーザーがプロトライジングの右肩を撃ち抜く
レイン「ぁああ!」
ドモン「大丈夫かレイン!!」
膝を落とすプロトライジングに駆け寄るシャイニング
レイン「ええ、まだ動くわ」
右手を動かすプロトライジング
レイン「でも今のは………??」
見ると、DGガンダムの群れの奥に、二機のガンダムが立ち上がる
ドモン「まさか………」
その一機の姿に驚くドモン
レイン「それにもう一つは確か………」
立ち上がったDGガンダムは
ネオジャパン《ウルベガンダム》
ネオスウェーデン《ノーベルガンダム・ルンド》
である
続く……