三侠新傳
〜東方のたま

新宿編その1

●プロローグ

廃墟と化したネオニューヨークのダウンタウン
瓦礫で埋め尽くされたネオフランスのセーヌ川
水害により崩れ落ちるネオチャイナの五岳の山々
豪雪に埋められたネオロシアの広場

それらの荒廃した世界各地を巡り流れる一人の少年

少年「………………」

その眼光は鋭く、常に何かを探し狙いを定めようとしている

そしてネオホンコン………

その情景は全域にわたって荒廃を見せ、巨大な廃墟の都市の跡地と化している

その中央に聳え立つ元ネオホンコン庁舎であった廃ビル
少年は歩みを止め、その崩れかけたビルの壁面を見上げ、壁に彫り込まれた一曲の詩に悲しみを覚える

東方不敗は遥かに滅び………
三界流転 侠気侠勇
されど世界は移ろう事なく
王者の風も未だに吹かず
大地も滅びの歩みを止めず
外れること無く、迷うこと無く

いつしか時は暮れ始め、文字は紅き夕陽を受けて血染めが如く浮き上がり、夜の闇に血が滲んだように沈み残っていく

●世界の現状

消えゆく文字と入れ替わりに現れるストーカー

ストーカー「さて皆さん………
突然ですが、今回最後のGガンダムは、皆様のご記憶にも残っているかと思われるあの出来事………」

×      ×      ×

ドモン&レイン「石破ラブラブ天驚拳!!!!!!!!!!!!!」

二人の拳がデビルガンダムを撃破する

×      ×      ×

ストーカー「ドモン・カッシュとレイン・ミカムラの二人による見事な愛の拳により、デビルガンダムがこの世界から姿を消した12年後が舞台となります……」

崩れ消えていくデビルガンダム

ストーカー「そこで物語を始める前に、世界はどのように変わったのか?その様子を簡単にご説明させていただきましょう」

次々に回想されるデビルガンダム事件の様子

ストーカー「まず、人々はあのデビルガンダム事件を《DG事変》と呼び、ガンダムファイトのこれからと、世界の在り方を探り始める事になりました………」

ガンダムファイト国際委員会に集結する世界の代表たち

ストーカー「ところが、そんな矢先に世界各地で一つの事件が起きたのです………ことの起こりは、ある男が廃墟の中に輝く一つの石を発見したことでした………」

×      ×      ×

廃墟の中で輝く石を拾い上げる男
その瞬間、石が大きく膨れ上がり、ガンダムの顔に変形を始める
慌てて石を投げ離す男
地に落ちると共に爆発消滅する石

×      ×      ×

ストーカー「そうです………これはデビルガンダムの力です………
思い出してください………あのデビルガンダムの消滅時、その体は粉々に散り、輝きと共に地球へと舞い降りていきました………いわばDGの屑、《DGダスト》となって………」

地球に輝き降り注ぐデビルガンダムの残骸
その中に、大気圏を通過し地上へと降り到達するものがある

ストーカー「そして驚くべき事に、そのダストが生きていたのです」

暗闇に妖しく輝くDGダスト

ストーカー「勿論ダストは、DGの恐るべき自己再生・自己増殖・自己進化の《アルティメット三大理論》は持ち揃えていませんでした………所詮は屑です」

輝きを失うDGダスト

ストーカー「ですが、そのダストの中にはDGエネルギーが残り香のように埋蔵されており、時として爆発など大きな事故になりかねず、危険な物である事は確かなままでした」

ダストの背後に見えるデビルガンダムの姿

ストーカー「そこでまず決定されたのがガンダムファイトの中断でした。
なぜならば、DGダストが世界に散らばっている以上、サバイバル・イレブンの様に迂闊にガンダムを野に放てば、またDGダストに取り憑かれ、再びデビルガンダムが生まれるかも知れません………そう考えた世界各国は、DGダストを世界から完全に排除できるまでガンダムファイトの一旦中止を決定したのです」

輝きを失いうなだれるガンダムたち

ストーカー「更にこのままDGダストを放置する訳にもまいりません………何せあのDG事変を考えると、ダストであっても脅威にしか感じられないのです………そこで全世界は協力し、一つの対策を講じました!
それこそが、
デビルガンダム管理局
〜〜Centers for Devil-Gundam Control〜〜
の設立です」

浮かび上がる【CDGC】の文字

ストーカー「つまりは人類とDGダストの接触を予防・制御しようというのです。
そこでまず、ネオジャパンの領土である離島コロニーを一つ独立させ、そこを国際DG研究所とし、元ネオジャパン・ガンダムファイト委員カラト長官を初代研究所所長に着任させ、更にレイン・ミカムラ、いえ、レイン・カッシュを研究責任者に任命」

ネオジャパンから離れていく離島コロニー
研究所を背景に浮かび上がるカラトとレインの姿

ストーカー「結果、カラトの意外な指導力とレインの研究により、《DG探知機》が開発され、世界のどこに?と正確な場所までは特定できませんが、地球全体にどれだけの量のDGダストが埋没されているかを検知するシステムが完成され、それを頼りにDGダストを発見・回収し、地上より一掃撲滅しようというのです」

離島コロニーの下部に巨大なアンテナが設置され、世界地図にDGダストの点滅反応が始まる

ストーカー「そして、その役目を実行するのが《DGハンター》と呼ばれる存在でした」

暴れるDGダスト
そのダストに向かっていく男たち
DGハンターたちである

ストーカー「かつての元ガンダムファイターたちを筆頭に、様々な得意分野に秀でる強者たちを集め、ハンター免許の下に出来高報酬でDGダスト狩りをさせることにしたのです」

捕獲されおとなしくなるDGダストを、DG研究所スタッフに報酬と引き換えに渡すハンターたち

ストーカー「もちろん危険な役目ではありますが、回収したDGダストと交換に得られる高額報酬が腕利きのハンターたちを集める事になり、その結果………
CDGCの設立から約10年という驚異的な速さで、ダストの存在反応がDG探知機から消えていき、人類はDGの危機から今度こそ解放されようとしているのです!!」

世界地図データから消えていくDGダストの反応

ストーカー「そして、世界から全てのDGダストが消えたその時こそ、ガンダムファイトを再開するものと決めたのです!!」

立ち上がる無数のガンダムたち

ストーカー「ですが………事はそんなに簡単にいくはずは無く、世界の行く末には怪しげな気配が………」

●タイトル

【機動武闘伝Gガンダム外伝The East is Burning Red】

●ネオイタリアにて

少年「この男を知っているか………?」

一枚の写真を取り出し、トレビの広場に座り込んでいる男に問いただす少年
その写真を無気力に見る男

男「うん??………ぁぁ………こいつか?勿論知ってるよ………有名人だ………
なにせ、この世界をこんなにしちまった張本人みたいなもんだからな」

男の襟元を掴み揺さぶる少年

少年「そんな事はどうでもいい………それで、こいつはどこにいる?」
男「知らねぇよ!!」
少年「嘘をつくな!!こいつがこのネオイタリアへ来たのはわかってるんだ!!」
男「本当だよ!!少し前には確かにいたよ!でもどっか行っちまったよ!!」
少年「!!」

男を放り出し行く少年

男「ああ、そうだ………あの爺さんとしばらく一緒にいたな………そこの酒場だ、行ってみろよ」
少年「!!」

男の言葉に思わず駆け出す少年

×      ×      ×

ドアを勢いよく開き、酒場へと入ってくる少年

少年「聞きたい!この男を知ってる奴はどこにいる!?」
客たち「??」

突然入ってきて大声を上げる少年に驚く客たち

少年「あんたか?!あんたが知ってるのか?!」

次々に客たちに写真を見せる少年

少年「あんたがこの男を知ってるのか?!?」
客A「なんだお前は?うるせぇ奴だな?こっちはお楽しみの最中なんだ、少しは静かに………」

少年に殴りかかる巨漢の客A
しかしその前に、少年の一撃に倒されてしまう

少年「関係ない奴は黙ってろ!!それより」

他の客に呼びかけようとする少年
そこへ軽い拍手の音が割って入る

声「はっはっはっ、見事な一撃だな、見たところ流派・東方不敗の一手だな」
少年「!?」

東方不敗の言葉に驚く少年
店の隅から見ている初老の男がいる

声「だが、ワシの知ってる使い手に比べれば、遥かに幼い」
少年「お前か!この男を知ってる爺さんは?!」

瞬間、男に殴りかかる少年
だが、余裕で少年の拳を避ける初老の男

少年「何?!」

初老の男の動きに驚く少年

少年「………今の足運び………」
初老の男「その通り………お前と同じ東方不敗の足技だよ」
少年「なに?………どうして??」

唖然となる少年

初老の男「いやな………昔ネオホンコンでちょいと教わってな」
注・《ブルーレイBOX封入・『ガンダムたちの挽歌』》参照

少年「って、一体誰に??」
初老の男「誰にって?そりゃお前が持ってるその写真の男にさ」
少年「何だって??」

驚き自分の手にしている写真を見直す少年

少年「それじゃ………」
初老の男「ドモン・カッシュはワシの師匠さ、ちょっとだけな」

初老の男は《ベルチーノ警部》である

×      ×      ×

とある場所で通信中の男
《ドモン・カッシュ》である

ドモン「そうか………あいつが寺を逃げ出したか」
サイ・サイシー(通信)「まいったよアニキ、不意をつかれたからってオイラ一手喰らっちまったぜ」
ドモン「さぞかし強力な一手だったな?」
サイ・サイシー(通信)「全く〜〜〜しっかり血は継いでいるって訳さ」
ドモン「だから、お前の寺に入れて世間から隠したつもりだったのにな………」
サイ・サイシー(通信)「あぁ………何も知らない人たちから見れば、世界を揺るがした大罪人の」
ドモン「みなまで言うな」

苦い笑みを浮かべるドモン
それに呼応して笑うサイ・サイシー

サイ・サイシー(通信)「そうだね………」
ドモン「とにかく、後は様子を見ていよう、どうせ狙いは俺のはずだからな」
サイ・サイシー(通信)「ああ、それじゃ後は任せたよ」
ドモン「世話になったな、じゃあ」

通信を切るドモン

ドモン「ふふ………サイ・サイシーの少林寺で修行させていれば、少しはおとなしくなるかと思っていたが………」

ふと思い直すドモン

ドモン「まぁいい、俺も先を急ぐ事にしよう!」

崩れ残った都庁ビルを見るドモン

×      ×      ×

ネオイタリアの酒場

少年「新宿?!ネオジャパンの?!」

驚く少年

ベルチーノ「ああ、去り際にそう言ってたな」

頷くベルチーノ

少年「でも何のために??」
ベルチーノ「さぁな、そこまでは聞いちゃいない………ただ、大事なものを探しに………とか言ってたな………」

ふと気づくベルチーノ

ベルチーノ「それよりお前はドモンを捜してどうするっていうんだ??」
少年「勿論、ぶっとばす!!」

拳を握り怒りを露わにする少年

少年「それで俺の父上が遺した形見を取り返す!!」
ベルチーノ「父親の形見?なんだそりゃ??」

ベルチーノの言葉に、更に怒りを増す少年

少年「珠だ!!流派・東方不敗の奥義を記した秘宝!《東方の珠(たま)》だ!!」

気づき驚くベルチーノ

ベルチーノ「そんじゃ、お前の父上ってのは??」
少年「東方不敗!マスター・アジア!!」

胸を張り名乗りを上げる少年

少年「そして俺がその息子!マスター・ジュニアだ!!」

●幕間

少年の言葉に唖然とするベルチーノ
その二人の姿に重なり現れるストーカー

ストーカー「これは大変です!………皆さんも今お聞きになった《東方の珠(たま)》という言葉………それはこの度の“語り落としていたエピソード”の中で、幾度か耳にしたもの…」

〜インサート〜

先代掌門の前で愕然とする独狐求敗
ギアナの盗賊たちからドモンたちを守る東方不敗

ストーカー「聞けば流派・東方不敗の奥義を一つの珠に記し、これを読み体得すれば最強の武闘家になれるという、誰もが憧れる幻の秘伝書なのです」

様々な東方不敗の技を表す人体図
そのいくつもが重なり合わさり、一つの珠の形へと凝縮されていく

ストーカー「そして今回の機動武闘伝Gガンダム最後の物語は、彼の探し求める東方の珠を中心に繰り広げられ、その主役は、ドモン・カッシュではなく、この少年マスター・ジュニアなのです!」

ドモン・カッシュの姿が回転し、その後から現れるジュニアの姿

ストーカー「更に舞台はガンダムファイト第13回大会から時が流れた12年後、
ジュニア16歳の春!
果たして彼はどのようなファイトを見せるのか?!」

構えるストーカー

ストーカー「それでは皆さん!ガンダムファイト!
レディ・ゴォォォオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!」

両手を挙げ、高らかに宣言するストーカー

●サブタイトル

【三侠新傳〜東方の珠〜】

●新宿

荒廃した新宿界隈
その中心地へ向かって歩み来る少年の影
マスター・ジュニアである

ジュニア「………………」

その瞳が見据える先に、半壊した都庁ビルが聳えている

ジュニア「待っていろ、ドモン・カッシュ!!」

怒りに燃えるジュニア

×      ×      ×

ジュニア「とは言うものの………」

空腹にヨタヨタしつつ腹をさするジュニア

ジュニア「腹が減っては戦はできぬ………ってやつか………」

×      ×      ×

ドヤ街と化した歌舞伎町へ辿り着くジュニア

ジュニア「へぇ………今まで行った国や町に比べて一番賑やかだな………」

闇市のような屋台街へと入っていくジュニア

ジュニア「食い物………食い物………」

店を物色しつつ、一軒の店の前に立ち止まる

ジュニア「光るカツ丼………??食った事ないな……どんな食い物だ???」

丼の看板を不思議げに見るジュニア

ジュニア「まぁいいや」

店主に札を渡すジュニア

ジュニア「これで足りるか??」
店主「あいよ、カツ丼いっちょ………」

札を受け取りかけるオヤジ

店主「なんだ?これは?!」
ジュニア「何って、ネオユーロだけど?」

ジュニアの答えに、怒り呆れ笑い飛ばす店主

店主「って、冗談じゃねぇ!こんな他所の紙屑でメシが食えると思ってんのか?せめてDG持ってこい!!屑でもカケラでも何でもいいから、DG持ってこい!DGを!!」

ジュニアを蹴り追い払う店主

ジュニア「痛てててて………ったくもう、DGって何なんだよ!そんな金、聞いた事ないぞ………??」

蹴られた尻をさすりつつドヤ街を物色するジュニア

ジュニア「仕方ない………さっさとドモン・カッシュを見つけてぶん殴っちまおっと!」

ドモン・カッシュの写真を取り出すジュニア
誰彼構わず通行人たちに見せて回る

ジュニア「あんた、この男を知ってるか?
なあ、こいつを見た事ないか?
あの〜〜〜こんな人知らないかな〜〜〜?
すみません、この人新宿に来てるはずなんですが
申し訳ありません〜〜〜チョットイイデスカァ??」

次々に写真を見せるが、みんな写真を見るのを嫌がるように相手にしてくれない

ジュニア「なんでぇ!人が丁寧に尋ねてるってのにぃぃ〜〜〜!!」

イラつきが増してくるジュニア

ジュニア「うん??」

ふと目の前に立ちはだかる男たち(ハンター)に気づく

ハンター「お前か??ドモン・カッシュを捜してる小僧ってのは??」
ジュニア「………………」

黙って睨み返すジュニア

ハンター「おい!返事くらいしろや!」
ジュニア「………ふん………それがどうした??」
ハンター「だったら着いて来な」
ジュニア「どこへだ?まさか奴の居場所を知ってるのか?!」
ハンター「来ればわかる!」

ジュニアを先導して進む男たち

ジュニア「………………」

×      ×      ×

目の前に金網のリングが見えてくる
その中に入れられた男たちの一団

ジュニア「こいつらは??」

不思議げに見るジュニア
そこへ、ハンターの若頭が喜び駆け寄ってくる

若頭「よぉ〜〜〜!!こりゃまたイキの良さそうな奴がいたもんだ!!」

なれなれしくジュニアに寄り付く若頭

若頭「是非ともおいらたちの仲間に入りなよぉ〜〜〜もうかるぜ〜〜〜」

背中に背負っていた巨大なソロバンを弾きながらジュニアを値踏みする若頭

ジュニア「なんだ?なんだ?」

嫌がるジュニア
その隙に耳打ちをする若頭

若頭「待ってたよ…ジュニア」

ジュニア「え??」

若頭の囁きに驚くジュニア
だが、次の瞬間

若頭「ドモン・カッシュを見つけたきゃ、大人しく入んな!!」

ソロバンでジュニアの尻を叩き、金網のリングにぶち込む若頭

ジュニア「何するんだ!!」
ハンターたち「だからドモン・カッシュを狩る仲間にしてやろうってんだよ!!」
「ただし、この中で生き残ればな!!」
若頭「さぁ〜〜〜!バクチだ!バクチ!!生き残るのは何番だ?!」
ジュニア「え?」

見ると背中に番号札が貼られている

若頭「さぁ、賭けて賭けて!!DGでもなんでもいいぜ!!景気良く賭けてくれや!」

飛び交う不思議な輝きを持つ石のような塊
《DGダスト》である

ジュニア「なんだあれ?DGって金か??」

山積みになったDGなどなど

若頭「よぉし!!願いましては!レディィィイ・ゴォォォオオオ!!!」

ソロバンの珠を鳴らす若頭
それを合図にゴングが鳴らされる

男たち「!!!!!」

突然争い出すリング内の男たち

ジュニア「ええ?」

ハンターたち「さぁ戦え!!」
「俺たちは強い奴しか仲間にしねぇんだよ!!」
「しっかり生き残れぇえええ!!!!!!」
ジュニア「こいつら!!」

外のハンターたちに金網越しに食い掛かるジュニア
しかし、男たちに殴られる

ジュニア「ぐっ!!」
ハンターたち「頑張れ頑張れ!!ドモン・カッシュを捕まえたら分け前はたっぷりだぜ!!」

煽り立てるハンターたち

ジュニア「お、お前ら何のためにドモン・カッシュを!??!」

戸惑うジュニア
男たちに抗いながら問いただす

男たち「決まってるだろ!!東方の珠を手に入れるのさ!!」
ジュニア「なんだって!!」

驚くジュニア
男たちの争いに埋もれていく

若頭「あらら、せっかく入れてやったのに」
ハンターたち「やっぱ、ガキじゃ無理だったか?!」
「はははははははは!!!!!」

大笑いするハンターたち

ジュニア「うるさぁあああああああああい!!!!!!!」
ハンターたち「!?!」

ジュニアの声と共に男たちが次々と打ち倒されていく
その中に見える獰猛なシルエットのジュニア
最後の一撃と共に男たちが全員倒れる

ハンターたち「な、何だと??」
ジュニア「教えろ!どうして東方の珠を知っているぅぅぅううううう!!!」

金網を破り広げるジュニア

ハンターたち「こ、このガキ何者だ??!!」

多勢で襲い掛かるハンターたち
だが次の瞬間、ジュニアの一撃を喰らい、気を失い倒れるハンターたち

ハンターたち「?!!?」

その情景に驚く一同

ジュニア「ふん!!どうやらガキはそっちみたいだな!!」

気を失っているハンターたちを小突くジュニア
その仕打ちにジュニアを囲むハンターたち

ハンターたち「野郎!!」
ジュニア「ふん!!誰でもいい教えろ!!東方の珠を!俺の珠を見た奴がいるのかぁぁああああああ!!!!!」

戦闘態勢で構えるジュニア

ハンターたち「くっ………?!」
「何だこのガキ………そうとうできるぞ………??」

ジュニアの闘気に押されるハンターたち

ハンターたち「かまわん!力ずくで仲間にしてやれ!!」

全員で襲い掛かろうとするハンターたち
そこへ突然、凄まじい圧力の声が響き渡る

声「やめとけぇぇえええええええええええ!!!!!!!!!」
ハンターたち「うひぃぃい!?」

声の圧力に身を震わせるハンターたち

ジュニア「!!!!!」

咄嗟に声の重圧に耐えるジュニア
その声を発した者を見る
ハンター募集の看板の奥に巨漢の影が見える

巨漢の男「見たところ結構な強者が引っかかってくれたようだな………」

手にしていた酒瓶を下ろし、店先の屋根を突き破り現れる身長4メートルの巨漢の男、元ネオギリシャ代表ガンダムファイター
《マーキロット・クロノス》である

ジュニア「なんだ?!このデカさは!!」
マーキロット「ふふ………珠の事を知りたければ、まずは先輩ハンターへの礼儀と詫びを入れてもらわんとな!!」

腕に旋風を纏いつつ、ジュニアに向かって一撃を叩き込むマーキロット

ジュニア「うぅぅぅううううう!!!!!」

両腕をクロスさせ旋風を受け切るジュニア

マーキロット「ほぅ!!さすがだな!!今の受けの一手、流派・東方不敗と見た!!」
ジュニア「!?」

手筋を見抜かれ驚くジュニア

ハンターたち「な………何………??」
「そんな………」
「それじゃ………このガキはドモン・カッシュと繋がってるのか??」

東方不敗の言葉にざわめくハンターたち

マーキロット「どうやら、獲物の方から網に掛かってくれたようだな!!」
ジュニア「何?!」
マーキロット「噂は聞いてるぞ……ドモン・カッシュと東方の珠を探しているガキがいるってな………しかもあの東方不敗の息子だって事もな!!」
ジュニア「だったら何だ!!」
マーキロット「どうだ?俺と手を組まんか?東方の珠を手に入れるにはそれが近道だぞ??」

ジュニアに迫るマーキロットの巨体

ジュニア「ああ、確かにあんたは強そうだ………でも前のガンダムファイトでドモン・カッシュに二度も負けてるんじゃなかったっけ?」
マーキロット「むぅぅう!!!」

ムカつくマーキロット

ジュニア「普通にやったら敵わない……また負けたらどうしよう??って思ったら一人じゃ心もとなくって夜も眠れな〜〜〜い!それで、こんな連中を集めてるって訳だ?」
マーキロット「むぅぅぅううううううううう!!!!!」

更にムカつくマーキロット

ジュニア「いいぜ!!一緒にやろう!!但し頭は俺だ!!当然、珠は俺のもの!!お前には俺の少林派の一手を授けてやろう!!それでどうだ?」

ついにキレるマーキロット

マーキロット「喰らえ!!裁きのイカヅチィイイイ!!!!」

輝きと共に叩きつけるマーキロットの拳

ジュニア「!!!!!ならば!!!!!」

その拳に向かって同じく拳をぶつけるジュニア
激音と共にぶつかる二人の拳が衝撃波を放つ

一同「うぁああああ!!!!!」

衝撃に吹っ飛ぶハンターたち

ジュニア「す…すっげぇ威力だ!!」
マーキロット「ははははは!!年季が違うわぁぁあああああ!!!!!!!」

ジュニアの拳を押し返すマーキロット

ジュニア「まずい!!」

ジュニアの顔面に迫るマーキロットの拳
その瞬間、小さな玉が二人の間に転がり落ちる

ジュニア「??」
マーキロット「??」

玉に気を取られる二人
その瞬間、閃光と共に爆煙が立ち上がる

ジュニア&マーキロット「!!!!!!!!!」

ハンターたち「うわぁああ!!」
「何も見えねぇ!!」

混乱する一同
その中でジュニアの手を引く若頭

若頭「こっち!!」
ジュニア「え??」

一方的に腕を引かれていくジュニア

マーキロット「ええい!こんなもの!!」

息を吸い込むマーキロット
次の瞬間、口から風を噴き出し爆煙を吹き飛ばす

ジュニアの姿が消えている

ハンターたち「いないぞ!!」
マーキロット「ちぃ〜〜〜!!今のは若頭の得意の手だ!!」

あたりを見回すマーキロット

ハンターたち「若頭がいません!!」
マーキロット「あいつ!何考えて………まさか、小僧と一緒に珠を!!」

若頭の裏切りに気づくマーキロット

マーキロット「ええい!!捜せ!!全ハンターに招集をかけろ!!若頭とガキを必ず捕まえろ!!奴らはドモン・カッシュのところへ行くはずだぁ!!」
ハンターたち「へい!!」

急ぎ散っていくハンターたち

マーキロット「ふざけやがってぇ〜〜〜!!!」

怒り心頭のマーキロット

マーキロット「だが………どうやら東方の珠は目の前のようだな!!」

不敵に笑うマーキロット

×      ×      ×

ハンターたちが散り、誰もいなくなった元の広場

声「そろそろかな………」

広場の隅から聞こえる声
同時に何もない所からペロリとめくれるように若頭の顔が現れる

若頭「良し!今のうちに逃げるぞ!!」

コート状のマントから抜け出る若頭
ジュニアの手を引きドヤ街の隙間を隠れ進む

ジュニア「って、何だ今のマントは??」
若頭「なんでもいい!!急いで!!」

抵抗虚しく、暗闇へ引きずられていくジュニア

●新宿西口

ドヤ街から遠くに離れた新宿西口付近
ゴミで溢れた改札跡に影が蠢き、若頭とジュニアが現れる

ジュニア「ふぅ〜〜〜、なんだここは臭いな」
若頭「まぁ、今はゴミの集積所だからな、生ゴミから動物の死体、時には人の死体まで転がってるさ」
ジュニア「ゲエ………」

思わず吐き気を催すジュニア

若頭「けども〜〜〜」

着ていたコートを脱ぎ捨てる若頭
中から現れたのは、同年代の少女である

少女(若頭)「よっしゃあ!!ここまで来たらこっちのもんや!!」

突然関西訛りになる若頭の少女

ジュニア「なんだ??お前、女だったのか???それで良くこんなところに」
少女「女も男も関係あらへん、そんな事言うとったら、ここで生きていけんもん」

満面の笑みで答える少女

少女「なんか文句あるんか?」
ジュニア「変な訛り………まぁいいや、助けてもらった礼は言うよ」
少女「礼より銭がええな!」

意地悪くジュニアをからかう少女

ジュニア「って言われてもこれしかないんだ」

ネオユーロを出すジュニア

ジュニア「ここじゃ使えないんだろ?」

ネオユーロの札を受け取る少女

少女「かまへん、裏の両替場に持ってったら何かの足しぐらいにはなるわ」
ジュニア「なるほど………じゃ返せ!!それで食い物を!!」

ネオユーロを取り返そうとするジュニア
しかし、空腹がぶり返しヘタってしまう

ジュニア「ダメだ………力が………」
少女「しゃあないな、貸しといたるわ」

お腹に抱えたリュックからジュニアに食料を渡す少女

ジュニア「利息が高そう………」
少女「わかってるやん!」

ソロバンを弾く少女

×      ×      ×

食べ終わるジュニア

ジュニア「助かった〜〜〜」
少女「それは何よりや」

ジュニアの食べっぷりに呆れ見る少女

ジュニア「で、お前…名前何て言うんだ?」
少女「ウチはエイチや!」
ジュニア「エイチ??」
エイチ「せや、ごっつエエ知恵と知性の持ち主って意味やねんで」

地面に《叡智》と漢字を書くエイチ

エイチ「こんな字書くねん、難しやろ?」
ジュニア「はぁ〜〜〜叡智ね?」

漢字とエイチを見比べるジュニア

エイチ「なに感心してんねん?テレるやないかぁ〜〜〜」

赤くなってジュニアを叩くエイチ

ジュニア「痛ぅ〜〜〜どこが知性だか?」

呆れるジュニア

エイチ「それで人の名前を聞いたんやから、自分も名乗らんとな?」
ジュニア「あぁ悪い、俺は」
エイチ「東方不敗の忘れ形見が一子、《マスター・ジュニア》やろ?さっきのデカいおっさんも言うとったやん」
ジュニア「当たり、知ってたら聞くなよ………でも、どうして俺だってわかった?!」
エイチ「あんたアホちゃうか?ええか?世界の方々で《この男をしっとるか?》って写真見せて回ってるやろ、で、何かあったら東方不敗の真似事みたいな技で暴れたら丸わかりや、このイチビリが〜〜〜」
ジュニア「う………」
エイチ「しかも写真の男は、あんたに輪をかけたアホのドモン・カッシュや、とにかく世界中で噂になってるんやで?」
ジュニア「へぇ………??」
エイチ「知らんかったでは済まへんわ、世間知らずも大概にしぃや」

呆れるエイチ

ジュニア「でもな………実は俺、物心ついた4歳の頃から悪い坊主に寺にぶち込まれて、桶で水汲みさせられたり、木の人形を殴ったりさせられてたんだ」
エイチ「拉致監禁か!!」
ジュニア「まあ、おかげで少林派の技で戦えるようになったけどさ、おかげでこの12年くらいの世界の事は良くわからないんだ」
エイチ「ふ〜〜〜ん、そら難儀やな〜〜〜」

呆れるエイチ

エイチ「とはいえ世間はほっとけへん、ここの新宿でもあんたが来るんやないかて、待ち伏せしてたんや」
ジュニア「はぁ………」

先輩風をふかすようなエイチに押されるジュニア

ジュニア「でもさ、あいつらどうして俺を?」
エイチ「それは!東方の珠の正体や!!あいつらそれが欲しいねん!」
ジュニア「珠の正体??何だそれ??」
エイチ「しらばっくれたらアカン!正直に話しや!!」

ジュニアに向かって構えるエイチ

ジュニア「まさか、お前も珠を狙ってるのか??」
エイチ「せやったら、どないやっちゅうねん………」

睨み合い拳を構える二人

ジュニア「決まってる!!」
エイチ「シバイたるわ!!」

凄まじい速さで拳を繰り出す二人
その瞬間、二人の背後にいたDGハンターに二人の拳が炸裂する

ハンター「ぐぁあああ!!!!」

絶叫と共に倒れるハンター

エイチ「まだおるで!!」
ジュニア「わかってる!」

続けて無数の拳を繰り出しハンターを打ち据えるジュニア

エイチ「ご破算で願いましては〜〜〜!」

エイチも背中の大型ソロバンを構え、指で次々に玉を弾き飛ばす

ハンターたち「ぐぁ!!」

ハンターたちに当たった玉が小さく爆発し、相手を吹っ飛ばす

ジュニア「面白いな、それ!」
エイチ「か弱き少女は武器持ってもええねん!!ほれ!勘定合わせたる!!」

大型ソロバンのカドで相手の頭を叩くエイチ

ジュニア「うわ〜〜〜それが一番キツイ!!」

次の拳を構えつつ、周囲を見る二人

ハンターたち「こっちだ!!」
「いたぞ!!」
「集まれぇえええ!!」

次々に二人に襲い掛かるハンターたち

エイチ「まずいな、ぎょうさんすぎるわ!」
ジュニア「とにかくやるしかない!」

ハンターたちに向かおうとするジュニア
しかし、エイチが蜘蛛の巣のような網を投げ、ジュニアを捕まえる

エイチ「あかん無理すな!それよりこっちや!!」

ジュニアを引っ張り、地下鉄の入り口へ向かうエイチ

ハンターたち「何?!」
「そっちは!!」

エイチの向かった先を見て怯えるハンターたち
次の瞬間
銃声が響きハンターが一人倒れる

エイチ「御明算〜〜〜!!」
ジュニア「今のは誰が??」

銃声がした方向を探し見るジュニア
都庁ビル跡の最上階の人影に気づく

ジュニア「あんな所から??」
エイチ「何してんねん?!早よしぃや!!」

地下鉄入り口へと入っていくエイチ

ハンター「しまった!」

ジュニアとエイチを追いかけるハンターたち

そこには地下鉄への入り口が不気味に構えている

×      ×      ×

マーキロット「何??奴ら人喰い穴へ入っていっただと?」

ドヤ街の屋台で飯を食らっているマーキロット

通信「そうです!!まさかあんなところへ逃げるとは!」

怯える通信の声

マーキロット「うるさい!!絶対に逃すな!!お前たちは入り口を見張ってろ!!いいな!!」
通信「わかりやした!!でも早く頼みま…!!」

その瞬間、銃声が響き聞こえる

マーキロット「どうした!!おい!!応えろ!!」

通信相手が撃たれた事に気づくマーキロット

マーキロット「う〜〜〜む………どうやら都庁ビルか?噂は本当だったな………ドモンはそこにいる」

そこへ別の通信が入る

マーキロット「うん??ギルド本部から??」

通信を受け取るマーキロット

マーキロット「ちょうど良かった!!今、例のジュニアが新宿に」
ボス(通信)「その報告は受けている、だが、それよりも上玉が引っかかっていたじゃないか?」
マーキロット「上玉?」
ボス(通信)「そうだ………お前のところの若頭だ」
マーキロット「あいつが??」

驚くマーキロット

×      ×      ×

地下通路を逃げるジュニアとエイチ

×      ×      ×

マーキロット「ええい!!どうやら俺が出るしかないのか!!」

立ち上がるマーキロット

マーキロット「しかし久しぶりだぜ………俺をまた戦車に乗せる奴がいたとはな!!」

足を地面に踏み込むマーキロット

マーキロット「出ろ!!ガンダム!!」

地中から現れるゼウスガンダムのシルエット
2匹のガンダムヘッドが馬になっている戦車の上に立つ

ゼウスガンダム「!!!!!!!!!!」

ゼウスガンダムの咆哮が響き渡る

●地下鉄ホームの通路

ジュニア「ちょ、ちょっと待て!!」

走るのを止め、恐る恐る周囲を見るジュニア
比べてエイチは平気で進む

エイチ「何ビビってんねん?」
ジュニア「バカ言うな!!ただな………」

ちらりと壁を見るジュニア
それは壁ではなく、巨大なカメラアイの残骸であり、かつてデスアーミーと呼ばれた兵隊ガンダムの成れの果てである

エイチ「安心しぃな、もう完全に壊れてる。絶対動けへんから」
ジュニア「って言われてもなあ………」

壊れたカメラアイの視線を感じるジュニア

ジュニア「まぁ、これじゃ連中も追いかけてくる気は無くなるか………」
エイチ「ここはな、めっちゃ難しい迷路になってんねん。そうとは知らんと入ってきたら、たいがいのもんは二度と生きて出れん、せやから人喰い穴って呼ばれてんねん、大袈裟やろ?笑ろてええで」
ジュニア「あ………」

広い空間に出る二人
その眼下には大量のデスアーミーの残骸が山になっている

ジュニア「でもよくこんな通路知ってたな………」
エイチ「あぁ………おかあはんに教えてもろたんや、昔ここ通った事があったんやて………」
ジュニア「おかあはんが?どうしてこんなところを??」
エイチ「あ?そ、そうやな?何でやろ??知らんわ」

慌てて話をそらすエイチ

ジュニア「ふ〜〜〜ん、でもこんな場所が平気だなんて結構な強者だな」
エイチ「え?そんな事ないで、優しい普通のおかあはんやで?」

言いかけてふと気づくエイチ

エイチ「うんにゃ、そお言うたら〜〜〜ネオスウェーデンは鬼門やったな」
ジュニア「鬼門?」
エイチ「ネオスウェーデンって聞いただけで角が生えてきて、デコに怒り十字が浮かんどったな………なんでやろ?」
ジュニア「さぁ〜俺が知るわけないだろ?」

不思議に思いつつ、気づくジュニア

ジュニア「と、そんな事よりさっきの続きだ!!」
エイチ「つづき?」
ジュニア「ごまかすな、どうして東方の珠を狙ってる?!珠の正体って何のことだ?!」

エイチに責め寄るジュニア

エイチ「なにって………」
ジュニア「正直に答えろ!!でなければお前が相手でも容赦はしない!!」

拳をエイチの眼前に向けて迫るジュニア

エイチ「わかったわかったって、もう〜〜〜近いちゅうねん」

ジュニアの拳を押し返すエイチ

エイチ「ええか?珠のあるとこにエテコのドモンありや!!そこを捕まえて一発どついたるねん!ただそれだけや!!」
ジュニア「はぁ??何だそれ??」
エイチ「これは深ぁ〜〜〜い訳があんねん!けど聞かんといて!それより、珠の正体のことやろ?それはなガンダムファイトとちょっとだけ関係あんねん」
ジュニア「珠とファイトが?」
エイチ「せや」

歩みを止め、デスアーミーの残骸に腰を下ろすエイチ

エイチ「ガンダムファイトが中止になってんのは知ってるやろ?」
ジュニア「あぁ」
エイチ「第13回大会のあと、第14回大会、第15回大会、続けて中止………できれば次の第16回大会までにはDGダストを一掃して、ガンダムファイトを再開したい!それまではみんなで仲良うしよう!!」

自分の説明を確認するように頷くエイチ

エイチ「けど、そうは簡単にはいかん」
ジュニア「じゃ、やっぱりみんな影でDGダストを自分のものにしようと?」
エイチ「それは無い!そんな事考える奴はアホや!第一、世界の誰にDGダストを制御できるっちゅうねんな」

納得し頷くジュニア

ジュニア「まぁ、確かに………」
エイチ「けどな、そんな時一つの噂が立ったんや………」

×      ×      ×

輝く東方の珠のイメージ

エイチ「もしかしたら、流派・東方不敗の奥義を極めた者は、DG細胞に冒されへんのとちゃうか?って、な」

×      ×      ×

ジュニア「そんなバカな!!あれは流派の奥義を伝えるものであってそんなモノじゃ!」
エイチ「ほな、なんであんたの父親の東方不敗はDG細胞に冒されへんかったんや?」

ジュニアに問い詰めるエイチ

エイチ「ええか?あんたの父親は一番デビルガンダムに近かってんで?愛機マスターガンダムもちゃんと自己再生しとったんや、せやのに中に乗り込んでた東方不敗は最後まで綺麗な体で、DG細胞の一片たりともくっついてなかった!これどう説明する??」
ジュニア「そ………それは………」

困惑するジュニア

エイチ「せやろ?」

逆にジュニアに迫るエイチ

ジュニア「………」
エイチ「ま、確かに根拠は無いわな………けど、DGハンターにとってはそのDG細胞に対する抵抗力がホンマにあったらハンターとして怖いもん無しや、それに何よりガンダムファイトが再開されたら………」

×      ×      ×

〜イメージ〜

エイチ「戦って!」

ガンダムを殴るガンダム

エイチ「戦って!!」

ガンダムを蹴るガンダム

エイチ「戦い抜いて優勝できるんや!!!」

ガンダムの山の上で勝ち誇るガンダム

エイチ「流派・東方不敗の技でや!!」

×      ×      ×

エイチ「それすなわち最強の武闘家になれる言うこっちゃ!そしたらいろんな国からスカウトが来て、どえらいギャラで売り込めて!左うちわで乱痴気三昧!!たまりまへんなぁ〜〜〜」

興奮して勝ち誇るエイチ

ジュニア「冗談じゃない!!父上が残してくれた形見だぞ!!そんな事に使われてたまるか!!!」

怒るジュニア
それを諌めるエイチ

エイチ「まあまぁ落ち着き、噂や噂!」
ジュニア「じゃ一体誰がそんな噂を?!」
エイチ「決まってるやん、アホのドモン・カッシュや」
ジュニア「ドモン・カッシュが??」
エイチ「せや、あのアホも珠を探してるんや、世界中いろんな所うろついてな」

×      ×      ×

ドモン「俺の珠を知らないか?」

世界各国を回るドモン

×      ×      ×

エイチ「って、聞いて回っとぉるねん!それってわざわざ珠の噂を広めてるだけやんか!」

大笑いするエイチ

エイチ「そんな時にあんたが珠を取り返そうと、親の仇のドモンを捜してるって事になったら、ますます噂に信憑性の尻尾つけて回ってるようなもんや……??」
ジュニア「そりゃそうか………」

真剣に考え込むジュニア
その様子に心の中で舌を出すエイチ

エイチ(心の中)「おもろ〜〜デタラメとも知らんと信じ込みよった………このまま話そらしまくったろ………!!」

ふとジュニアの様子に気づくエイチ

ジュニア「………いや………それ、尻尾じゃなく本当かもしれない………」
エイチ「え?何やて?」

驚くエイチ

ジュニア「具体的にはそんなものじゃないとは思うんだけど………」

思い出し始めるジュニア

ジュニア「父上から聞いた事があるんだ………東方の珠を一度カッシュ博士に預けた事があるって………」

記憶を辿るようにつぶやくジュニア

×      ×      ×

〜イメージ回想〜

自分が破壊した世界を前に愕然としている東方不敗

ジュニア「確か………償いがどうとか……って………」

カッシュ博士に東方の珠を手渡している東方不敗
喜びに手を取り合うカッシュ博士と東方不敗

×      ×      ×

ジュニア「もしかしたらその時に……何か………」
エイチ「ホンマかそれ??けど、それあんた幾つの時の話や?」

ジュニアの言葉に真剣になり始めるエイチ

ジュニア「多分、俺が4つの時………父上が13回大会に出る前だ………」

×      ×      ×

〜回想イメージ〜

焚き火を挟み向かい合う東方不敗とジュニア
東方不敗が何かを話している

×      ×      ×

ジュニア「間違いない………俺、小さい頃から記憶力が普通じゃないんだ………その証拠にここから一人で上に帰れる!」
エイチ「無理無理」
ジュニア「本当だ!ここまで来た道順、全部覚えてる………」
エイチ「………」
ジュニア「それに変だ……ドモン・カッシュは流派を会得してるんだし、珠だってちゃんと受け継いでいるはず………まさか、無くした??いや、そもそも父上から珠を受け継いでなかった!!」
エイチ「そお言うたら、ドモン・バカッシュはキング・オブ・ハートは受け継いだけど、東方不敗の掌門は渡されてない………」
ジュニア「………という事は………」
エイチ「アホボケドモンも珠を探しててもおかしない………」
ジュニア「じゃやっぱり珠に何か隠されていて……?」

困惑するジュニア

ジュニア「ちょっと待った!それならカッシュ博士に直接聞けばいいじゃないか?」
エイチ「それ、あかんねん………」

急に悲しげになるエイチ

ジュニア「??」
エイチ「博士はDG事変のすぐ後に病気が進んで、今は意識がないねんて………」
ジュニア「えぇ??」
エイチ「何でもな、博士は生まれ持っての病があって、その治療研究が始まりでアルティメット三大理論に発展したんやて………」
ジュニア「そ…そうなのか………よく知ってるな?」

エイチの寂しげな様子に疑問を抱くジュニア

エイチ「え?ああ、結構有名な話やで?!ホンマやで!!」

一転して、強がるように乗り出すエイチ

エイチ「せやさかい珠の秘密は直接聞いてみたらええやんか」
ジュニア「え?ドモン・カッシュの居場所を知ってるのか?」

驚くジュニア

エイチ「勿論や、そのためにここに来たんやで」

不敵に微笑むエイチ
穴の開いた天井に向けて鉤の付いたロープを2本投げ上げる

ジュニア「え??まさかこの上に?!」
エイチ「いくで!!ウチも珠の秘密が知りたいわ!」

それぞれロープを登り始めるエイチとジュニア

 

続く……