三侠新傳
〜東方のたま

ギアナ高地編その1

●プロローグ

〜ジュニアの夢〜

一面に花が咲き誇る空間

声「南西が西へ………」
声「南西が…西へ」
声「南南東を63………」
声「南南東を…63………」
声「そうだ………なら次は?」
声「28を北北西へ………」

言葉に合わせ拳を繰り出し、構えを作る人影
演舞をしている二人
東方不敗と幼い日のジュニア(4歳)である
その演舞の中に二人の会話が聞こえる

東方不敗「良いか………父はこれから第13回大会に出る………そして、事の次第では帰って来れぬであろう………」
ジュニア「どうして………??」
東方不敗「償いだ………」
ジュニア「償い??」
東方不敗「第12回大会の優勝で知り得た自分の罪のな………たとえそれが大罪人と呼ばれる事になっても…父はそうせねばならぬのだ」
ジュニア「………………」
東方不敗「そして………悔いはない………」

微笑む東方不敗

東方不敗「だが、一つだけお前に頼みがある………」

更に演舞を続ける東方不敗

東方不敗「名は《輝珠掌上(きじゅしょうじょう)》………この演舞を忘れるな………更に一手一手の音を聞け」
ジュニア「………音を??」

父親の演舞を憧れの瞳で見つめるジュニア

東方不敗「そうだ………そして、その意味を………」

暗闇の中で演舞を続ける東方不敗

その演舞を見つめるジュニア
やがて暗闇が明け、眼前に現在のギアナの情景が現れる

●ギアナ入り

ギアナのテーブルマウンテンの一つに立つジュニアとエイチ
眼下に広がるその全景を唖然と見つめている

ジュニア「そ……そんな………」

その情景に愕然となるジュニア

崩れたテーブルマウンテンの数々
半壊し、水量が激減したエンゼルフォール
荒れ果てた大地

その大半の土地を、リング状態に巨大なコーナーポストが囲っている

エイチ「これが………あんたの生まれたギアナ??」
ジュニア「違う………俺の覚えてるギアナはこんなんじゃなかった………」

コーナーポストが囲う広大な大地
ギアナ特区である
その中は、溢れていた緑が無くなり、土までが赤黒く染まり、空もスモッグに包まれている
更に、常に響く爆破音と共に地下が破壊され、次々と土地が陥没していく
そして、
大地の中には工場が立ち並び、無数のハンターたちが蠢き、掘り起こした土壌の中からDGダストを選り分けている

もはや一大工業地帯となってしまったギアナ

ジュニア「………みんなDGダストを探してるってことか………」
エイチ「ホンマ………まるでゴールドラッシュ……と違うて………DGラッシュかいな………」

ハンターたちを見つめるエイチ

エイチ「まるでDGに群がる蟲やな………」
ジュニア「あぁ………」
エイチ「こんなん見たら思うわ………地球の再生、あんたの親の東方不敗………ホンマは正しかったんかもな………」
ジュニア「勿論だ!!それをあのドモン・カッシュが………」

その情景の一角にある古びたガンダムの姿に気づく

ジュニア「あれは?」
エイチ「シャイニングガンダムや………」
ジュニア「それって第13回大会でドモン・カッシュが乗っていた………」

腹に刺さったままのマスターガンダムの腕を見る

ジュニア「じゃ、あの腕は父上の!」

モニュメントのようになったシャイニングガンダムの姿を見つめるうちに、決意が強まるジュニア

ジュニア「………………よくわかったよ………この向こうに父上の珠と」
エイチ「ドモンのパーがおる………」

バリアの気配をうかがうエイチ

エイチ「けどな?ここに来るまでいろんな人に聞いたやろ!?このギアナの自治との引き換えに、CDGCが設置したコーナーポスト………」

聳え立つコーナーポスト

エイチ「おかげで特区は一度入ったら二度とは出れんのや!!見てみい!!」

上空を指し示すエイチ

×      ×      ×

コーナーポストに囲まれた特区の中へ飛び入った鳥の群れがそのまま滑空し特区の外に出ようとするが、コーナーポストが作り出すバリアに触れて燃え尽きてしまう

×      ×      ×

エイチ「ほらな!!それにミケロも言うとったやん!この中は地獄やて!それ、わかってんねんな!?」
ジュニア「………ああ………」

エイチに覚悟を問われ、静かに頷くジュニア

ジュニア「!!!!」

意を決して特区を目指し駆け降りる
その様子を見追うエイチ

エイチ「………そないに親の珠が大事かいな」

真剣なジュニアの様子に諦めるエイチ

エイチ「しゃぁない!こないなったら旅は道連れ世は情け、っちゅうやつや〜〜〜!!」

ジュニアの後を追い駆け降りていく

×      ×      ×

決意を漲らせバリアの中へと入っていくジュニアとエイチ

●ギアナ特区内・工業地帯

数日後

地下へ降りていくエレベーター
その中から地下採掘場へ出てくるハンターたち
汗まみれになりDGダストを掘り探し、見つけたDGダストを殴り合い奪い合う
その喧嘩を煽り見物するハンターたち

×      ×      ×

地上に出てくるハンターたち
掘り当てたDGダストを集積係に渡す
その中に混ざっているジュニアと男装のエイチ
掘削道具を係に返し、出口で点呼を受ける
そのままドヤ街へと繰り出す二人

エイチ「あ〜〜〜しんど」
ジュニア「全く…毎日毎日………どうして俺たちまでDGを掘らなきゃいけないんだ」
エイチ「しゃあないやん、まずは中の様子を把握せな動きにくい!郷に入れば郷に従えちゅうやろ?うん?朱に交われば赤くなる、か?」
ジュニア「どっちも違う」
エイチ「あ、虎穴に入らずんば虎子を得ずや!」
ジュニア「まあ、そんなところか」

状況に気合いが入らないジュニア
その二人の側を横切る運搬用モビルアーマー
手にはDGの積まれたコンテナを持っている

エイチ「ウチらの掘ったDGダストや」

コンテナの中のDGは少ない

エイチ「ギアナちゅうても大漁ちゅう訳にはいかんねんな」

運搬用モビルアーマーがバリアを越えて外に出る

エイチ「あいつらCDGCや」
ジュニア「ふ〜〜〜ん、バリアは関係ないんだな」

突然、遠方で爆発音が聞こえる

ジュニア「今のは?」
エイチ「あぁ、外に出したDGダストを処理してんねんやろ?」

×      ×      ×

外の廃棄場
DGダストを爆破している

×      ×      ×

ジュニア「苦労して掘っただけに、なんか虚しい気もするな………」
エイチ「まぁそう言いな、これで美味いもん食べようや」

小さなDGダストを取り出すエイチ

ジュニア「あ、お前持ち出しは禁止だろ?!」
エイチ「何マジメやねん〜ウチら本職で掘ってんのとちゃうで?それとも一生ここにおるんか?」
ジュニア「まぁ、そうだけど………」
エイチ「行こ!こっそりDG扱ってるヤバイ店、聞いといたから!」
ジュニア「本当に裏とかそういうの得意だな?それもゲルマン忍法か?」
エイチ「アホ、生きていくにはしゃぁないねん!さ、今日は串カツや!!」

元気にジュニアを先導するエイチ

ジュニア「こいつ、どうしてこんなに元気があまってるんだ??」
エイチ「あたりまえや!元気なかったら生きていけんもん!」

笑いつつ、ふと気づくエイチ

エイチ「けど、中に入ったら、案外地獄っちゅうほどでもないな?」
ジュニア「確かにな………作業は朝晩交代制だし、労働環境もしっかりしてる」
エイチ「それにDGを掘り出せばちゃんと分け前もあるしな………??」
ジュニア「でも最近は採掘量がめっきり減ってきたって噂だぞ」
エイチ「確かにな、今日も停電が2回あったし」

×      ×      ×

~採掘現場の回想~
突然明かりが消え、現場の機器が停止する

×      ×      ×

エイチ「そろそろギアナのDGも掘り尽くされてきたんかな………??」

ざわめき始める周りに気づくエイチ

エイチ「うん?どないした??」

見るとハンターたちが集積場の方へ向かっている

ジュニア「あの、何かあった?」

ハンターたちに尋ねるジュニア

ハンター「なんかすっげぇでかいDGが見つかったんだってよ!!」
「下手したら新しい鉱脈じゃないかって??」
「だから首相様が発掘場をご視察されるんだとよ!」
ジュニア「首相?」
エイチ「面白そうやな、うちらも見に行こ!!」

混雑の中に入るエイチ
だが、その混雑の中で手にしていたDGを落としてしまう

エイチ「あっ!!晩飯代が!!どこいくねん!!」

人混みの中を転がりいくDG
それを追いかけてハンターたちの足元を縫って進むエイチ

エイチ「どいてどいて!!踏まんといてや!!頼むで!!」

ハンターたちに蹴られ転がるDG
突然、人混みが晴れてそこで止まるDG

エイチ「よっしゃ、ジッとしとりや!!」

DGを拾おうとするエイチ
だが、その前で男の足がDGを踏むように入る
見ると、高級車から降り立ったドライバーである

エイチ「え??」
ドライバー「お前、DGを採掘場から持ち出す許可を持ってるのか?!」
エイチ「いや、それは〜〜〜」

焦るエイチ

ドライバー「ふん!まあいい!こんなのはクズ中のクズ、持ち出しても何もならん!だが、ルールはルールだ、没収だ!!」

DGを拾い上げるドライバー

エイチ「あ!!あんたパクる気か!!」
ドライバー「何!?」

一触即発の二人
そこへ一人の男の声が割って入る

男「待ちなさい!!大切な労働者の気持ちを折るような事をしてはいけません、このギアナは彼らのおかげで成り立っているのですよ」

車から出てくる男

《ウォン・ユンファ》である

ドライバー「はっ!申し訳ありません!!」

敬礼しつつ、DGをウォンに手渡すドライバー

ウォン「そして君!」

エイチの前に立ち止まるウォン

ウォン「どれほど小さくとも、このギアナで見つけたDGは全て私のもの」

ポケットからギアナ通貨を出し、エイチの手に握らせる

エイチ「え?」
ウォン「今回は大目にみよう、でも次からは」
エイチ「しません、しません!これっきりこれっきりで〜〜〜す」

慌ててギアナ通貨を手に逃げるエイチ

エイチ「毎度おおきにぃ〜〜〜!!」

ハンターたちの中へ消えるエイチ
そのままジュニアと合流する

ジュニア「何してんだよ!目立っちゃダメだろ!」
エイチ「かんにんかんにん〜〜〜けど、意外に優しいやっちゃで、あれがここの首相っちゅう奴やろ?」
ジュニア「ああ………名前は知ってる………DG事変を起こした一人だ………でも馬に蹴られて死んじゃったと思ってたけど」
エイチ「DG細胞に冒された奴はしぶといんやな」
ジュニア「うん………」

用心深くウォンを見るジュニア
一方、集まっているハンターたちを見渡すウォン

ウォン「さて!新鉱脈の可能性を発見してくれたハンターはいずこかな?」
係員「はっ!!このハンターです!」
ハンター「ウォン首相に御目通りいたします!」

サッカーボール大のDGを手に出てくるハンター

ハンター「第35発掘区域で発見!!現在新規鉱脈の可能性ありと見て」
ウォン「ほぉ〜〜〜これはなかなかの」

ハンターの話を遮り微笑むウォン

ウォン「手にとって見てもいいかな?」
ハンター「勿論です!!」

DGダストを差し出すハンター

ウォン「どれどれ?」

手にしようと乗り出すウォン
だが、手を滑らせDGダストを落としかけるハンター

ウォン「おっとっとっ」

その瞬間、ハンターがナイフを出し、ウォンへと突きつける

ハンター「もらった!!」

ウォンの後ろに周り、首にナイフを突きつけるハンター

ハンター「でかいDGをエサにすれば隙を見せると狙ったが、思った通りだ!さあ、おとなしくDGの貯蔵庫へ案内してもらおうか!」
ウォン「おやおや、一体何を?」
ハンター「勿論、ここで掘られた最大の逸品をいただくのよ、で、その後お前を始末してこのギアナの支配者になるって算段だ!」
ウォン「なるほど、泥棒か?でも、それは私のボディガードが許さないよ」
ハンター「何?そんなものどこに」

瞬間、男の影が空を駆け現れ、ハンターが気づく前にナイフを蹴り飛ばしてしまう

ハンター「!!」

ハンターの前に降り立つ男の影

男「!!!」

更に指突でハンターの肩を外し動きを封じてしまう

ハンター「な、何だ!!!」

ナイフを持ち替えようとするが、男の次の手を腹に受け、気を失い地面に倒れるハンター

ハンター「うぅ………………」

その早業に唖然となる一同

ジュニア「い………今の技は??」
エイチ「そんな………まさか??」

背を向けた男の正体に嫌な予感を受けるジュニアとエイチ

男「おい!!こいつを独房に入れておけ!!」

係員に指示する男

ウォン「はっはっはっ!さすがは私の見込んだボディガード………でも、もう少し早く出てきてくれてもよかったんだがね?」

男を皮肉げに見るウォン

男「ふん!!あれくらい自分でどうにかできるだろう?」
ウォン「まぁね」

ウォンの顔面にDG細胞が輝き見える

男「それに、あんなチンピラよりも気になる気配があってな………」

不満げに振り返る男

《ドモン・カッシュ》である

ジュニア「やっぱり?!」
エイチ「ボディガードやてぇ???」

唖然となる二人

ドモン「!」

二人の気配に気づき見るドモン

エイチ「あかん!隠れな!!」

咄嗟にジュニアの頭を押し下げ、物陰に隠れるエイチ

ドモン「………………」

しばらく周りの気配を窺うドモン

ドモン「ふん………大丈夫だ………行くぞ」
ウォン「はは、これじゃどっちが雇い主だか?」

車に乗り込み行くウォン
その様子を見ているエイチとジュニア

エイチ「何やっとんねん?あいつぅ〜〜〜」

去っていくドモンを追い見るエイチ

エイチ「アホや!ホンマモンのアホや!!」
ジュニア「でもガードマンってことは、いつもあの首相のそばにいるんだろ?それじゃ探す手間が省けていいかもな」

一人で出ようとするジュニア

ジュニア「俺、早速どついてくる………」
エイチ「って、待ちぃや!」

ジュニアを引き止めるエイチ

エイチ「無茶してどないする?!まずは外に出る算段つけなあかんやろ?」
ジュニア「あ………そうか、バリアは中からは出れない………」

ふと気づくジュニア

ジュニア「じゃ、さっきの運搬モビルアーマーのDGに紛れ込むってのは?」
エイチ「いや〜〜〜監視がキツいから無理やろな………」
ジュニア「そっか………」
エイチ「それに万が一うまいこと珠を取り返しても、その奥義でいきなり強うはなれんのやで?」
ジュニア「確かに………ちゃんと修行しなくちゃな………」
エイチ「難儀やな………珠をペロリとなめたら強なるくらいにしといて欲しかったわ」
ジュニア「あのな〜〜〜珠を飴玉みたいに………」

そこへ通りかがった古参のハンターに声をかけられる

古参ハンター「よぉ、お前さんたちも珠が目当てで来たのか?」
エイチ「そ、そうだけど?悪い??」
古参ハンター「いやいや、悪くはないけど、どう見てもガンダムは持っちゃいなさそうだからよ」
エイチ&ジュニア「ガンダム??」

突然のガンダムの言葉に驚く二人

●ガンダムファイト

轟音を立て殴り合うガンダムたち
その拳が相手のガンダムに炸裂し、倒れるガンダム
一方では腕をもぎ取られ爆発し、また一方では3体がかりで集中攻撃を受けるガンダム
ついにはコクピットを剥がされ、頭を潰される

ギアナの中央に広がるリングエリアで戦うガンダムたち

古参ハンター「見ての通り、このギアナ限定の脱法ガンダムファイトだ!」
ジュニア&エイチ「うわぁ〜〜〜」

唖然となる二人

古参ハンター「でな、優勝賞品が《東方の珠》なんだとよ!」
ジュニア「なんだって!!東方の珠が!!!!!」

驚くジュニア

ジュニア「どうして賞品なんかに?!第一誰がそんな!!」

古参ハンターに喰ってかかるジュニア

古参ハンター「ウォン・ユンファ首相だよ」
ジュニア「あいつが?!!」

×      ×      ×

微笑むウォン・ユンファ
その手に《東方の珠》らしきものが見える

×      ×      ×

古参ハンター「本当だぜ、それに釣られた若いハンターたちが、我こそはとガンダムに乗って外から集まってくるんだ」

×      ×      ×

それぞれのガンダムでギアナに集まるハンターの群れ
ただし、さまざまな工作用メカの頭部にイエローアンテナを付けたただのニセものが多数である

×      ×      ×

古参ハンター「でもな、高い参加費をウォンに借金するのはいいが、決勝戦まで勝ち上がれても、あのドモン・カッシュに叩き潰される!!その後、負けたハンターたちは借金背負って地下の重労働行きって訳だ」

×      ×      ×

ドモンの前に倒れているガンダム
地下の発掘現場で働くハンターたち

×      ×      ×

エイチ「つまり珠は労働力増大の餌って事やな………」

×      ×      ×

輝く珠を磨くウォン

×      ×      ×

エイチ「けど……まさかウォンが珠を持っとったとは………」
ジュニア「ガンダムファイトの商品だなんて………父上の形見をそんな事に!!!!!」

怒りに震えるジュニア
その様子に気づく古参ハンター

古参ハンター「うん?どうした?」
エイチ「ううん、何でもないです!!ガンダムファイトって聞いて武者震いしてるだけです」

古参ハンターには訛らずにごまかすエイチ

エイチ「けど、これやったら手っ取り早いやん?優勝したらええねんもん」
ジュニア「でもどうやってファイトに参加するんだ??俺たちガンダム持ってないぞ」
エイチ「せやった………シュピーゲルはバリアの外に隠したんや………」

×      ×      ×

ギアナの密林の中に隠してあるシュピーゲル

×      ×      ×

エイチ「あの子持ってきたら一発で正体バレるもんな………」
ジュニア「でも………どうすれば………!!」

ふと気づくジュニア、エイチに耳打ちする

ジュニア「………」
エイチ「うんうん………って、ジュニアも悪やのぉ〜〜〜」

意地悪い笑みを浮かべるエイチ

エイチ「ねぇ、おじさま?おじさまもガンダムで参加するの?」
古参ハンター「ああ、それでスタッフを探してたんだが、お前さんたちどうだ??」
エイチ「それいい!!おじさまのガンダム見せてくださる?!でもその前に………」

古参ハンターにニコニコと歩み寄るエイチ

エイチ「おっさん、これ欲しない??」

実はもう一つくすねていたDGダストを見せるエイチ

×      ×      ×

パシン!
と音を立てる花札

古参ハンター「またブタやぁ〜〜〜!!!」

花札を撒き散らしひっくり返る古参ハンター

エイチ「ほなガンダムいただきやぁ〜〜〜」

背中にイカサマ用の札を隠しているエイチ

×      ×      ×

脱法ガンダムファイト
次々にガンダムたちを殴り倒すジュニアとエイチのガンダム

エイチ「これ、なかなか上等なガンダムやな!!」
ジュニア「腕がいいんだよ!腕が!!」
エイチ「なんでもええわ!とにかく勝って勝って勝ちまくれ〜〜〜!!」
ジュニア「でもってドモン・カッシュをどついてシバイて、大事な珠を手に入れる!!」

決意と共に相手のガンダムを殴り倒す

その様子を観覧席から見ているドモン

ドモン「………………」

ジュニアたちのガンダムを見つめるドモンとウォン

ウォン「あのガンダム、なにか気になるのかな?」
ドモン「いや……」
ウォン「それじゃ………今日の決勝戦も頑張ってもらいましょうか」
ドモン「まかせておけ」

高らかに指を鳴らし上げるドモン

ドモン「ガンダァァアアアアアアアアアアアアム!!!!!!」

地中より現れるゴッドガンダム

ドモン「いくぞ!コアランダー!!!」

飛び来るコアランダーに飛び乗るドモン

エイチ「うわ!CDGCからパクった新型や!!」

呆れ怒るエイチ

ドモン「ランダーチェンジィィイ!!」

バックパック形態に変形するコアランダー
ゴッドガンダムに合体する
コクピットの中リングが下り、ファイティングスーツを装着するドモン
モビルトレースシステムが起動し、
翼を開き完全体として構えるゴッドガンダム弐
その姿は旧型のバックパックよりも戦闘的になっている

ドモン「ゴッドガンダムセカンドォォォオオオ!!!!!!」

イラつくエイチ

エイチ「なにカッコつけとんねん!!あの泥棒オヤジ!!」
ジュニア「まかせろ!!ギャフンて言わせてやる!!」

ファイティングポーズをとるジュニアのガンダム

声「どけ!」
ジュニア「え?!」

声に驚くジュニア
同時に割り込んできたガンダムに払い除けられる

エイチ「な、なんやなんや?!」

驚き見ると、巨大な壺が転がり入ってくる
その中から現れるガンダム

ジュニア「あれは確か!!」

全身を見せる《コブラガンダム》

不気味に笑う元ネオインド・ファイター《シジーマ》

シジーマ「ヒヒ!!屑鉄ガンダムは引っ込んでろ!!この決勝戦、俺様がいただく!」
ジュニア「何を!!」

コブラガンダムに飛びかかろうとするジュニアのガンダム
だが次の瞬間、右半身が麻痺して動かなくなってしまう

ジュニア「なんだ?どうした?!」
エイチ「毒や!!このガンダムに毒を仕込みよった!!」

見るとガンダムの肩にコブラの牙が刺さっている

エイチ「汚いやんけ!!」
シジーマ「うるさいよ、ついでにその口も黙らせてやろう」

言い放つと同時に牙から電流衝撃波が流れる

ジュニア&エイチ「!!!!!!!!!!!!」

シビれてヘタレ込むガンダム

ジュニア「こ………このぉおお………」
シジーマ「まぁ、そこで見ていろ!!私が東方の珠を手に入れるのをな!!」

ゴッドガンダム弐に向き直るコブラガンダム

シジーマ「久しぶりだな………だが今度こそ」
ドモン「うるさい………さっさとかかってこい!!どうせ瞬殺だ!!」

静かに闘気を練り上げるドモン

シジーマ「ふん………12年前の俺様だと思うなよ………」

コブラ笛を吹き始めるシジーマ

シジーマ「さぁ、出てこい我が子たちよ〜〜〜♪」

壺の中から次々と小型のコブラが現れる

エイチ「なんやあれ?!気色悪!!」
シジーマ「さぁ、一斉にかかれぇええい!!!」

シジーマの指示でゴッドガンダム弐に襲い掛かる小型コブラ群
ゴッドガンダム弐の全身の関節に絡みつき、その動きを止める

ドモン「………」
シジーマ「ふぇっふぇっふぇっ!!どうだぁ、今度こそ身動きがとれないだろう??」

大牙を立て、ゴッドガンダム弐に迫るコブラガンダム

シジーマ「12年前の雪辱!!今果たしてくれるわぁあああ〜〜〜!!!」
ドモン「変わらないな………やる事が」
シジーマ「いいや!前よりもパワーは上がって強力になっているんだ!?見ろ!!びくともせんだろう!!」

締め上げられるゴッドガンダム弐の関節

ドモン「ふふ………確かに大したパワーだ………だが、何か忘れていないか??」
シジーマ「うん??………!!!」

ふと気づくシジーマ
ゴッドガンダム弐の背中のブースターウィングが無い

シジーマ「え?え?」

見ると、上空に浮遊しているブースター

ドモン「気付いても遅い!!」

瞬間、ウィングがそれぞれ小型コブラに襲い掛かり、次々と粉砕していく
同時にウィングが合体し、巨大な棒となりコブラガンダムに襲い掛かる

シジーマ「ひぃ!!!」
ドモン「棍!!
釵!!
月刀!!
双節棍!
三節棍!!!」

次々とブースターの連結を変化させコブラガンダムに打ちかかる

ドモン「武器は使わぬ東方不敗!なれど一度放てば変化は自在!!!」

再び分離させ、一斉にコブラガンダムに突き刺さるブースター

シジーマ「ぐわぁぁあああ!!!!!!」

全身を刺し突かれるコブラガンダム

エイチ「えぐぅぅ………やりすぎやで」
ジュニア「武器を使うだなんて………流派の恥だ!」

唖然と見る二人

シジーマ「………………」

倒れ伏せるシジーマ

ドモン「ふふ………やはり瞬殺だったな………だが念の為!!」

コブラガンダムの頭を踏み潰すゴッドガンダム弐

シジーマ「ぎゃぁぁあああ!!!!!!」

ドモン「ガンダムファイト、国際条約第一条!頭部を破壊されたものは失格となる!!」

ドモンの残虐性に唖然となるジュニアとエイチ

ジュニア「そこまでしなくても………」
エイチ「あかん………あんなん…おかあはんに見せられへん………」

その時、ふと振り返るドモン

ドモン「そこのガンダム………」
ジュニア「な、何だ?!」

咄嗟にエイチの口を塞いで答えるジュニア

ドモン「邪魔が入った………だから三日だ………三日でそのガンダムを直せ」
ジュニア「え??」
ドモン「決勝のやり直しだ………いいな?」

去っていくドモン

ジュニア「あ…ああ………」

呆然と頷き、ドモンを見送るジュニア

DGダスト工業地帯の騒音とスモッグがギアナの夕日を隠していく

●CDGCコロニー

カラト「なんだと?!!ドモン・カッシュがウォンに加担してるだと??」

部下の報告に驚くカラト

部下「はっ!潜伏させたスパイによると、ウォン・ユンファはギアナの地下から東方の珠を発見したとの事で、そこへドモン・カッシュがギアナに入り…」

×      ×      ×

〜回想イメージ〜
ドモンの前で珠を見せるウォン

ドモン「それは俺の珠だ!!俺の珠に触るな!!」
ウォン「おっと、それ以上近づけばこの珠がどうなるか?」

取り返そうとするドモンを制止するウォン
珠の下にはマグマ状の溶解液がある

ドモン「くっ!!」

耐えるドモン

×      ×      ×

カラト「なるほど流派の宝を人質にされては手も足も出せんか………」
部下「現在はウォンのボディガードの役目を………」
カラト「情けない…珠一つで言いなりか………相変わらずだな」

困惑するカラト

部下「このまま好きにさせておいて良いのでしょうか?」
カラト「うむ………やはりウォンをギアナの首相にしたのは失敗だったか………?」
部下「ですが、奴を封じ込めるにはそうするしか」
カラト「確かにな………」

×      ×      ×

〜ウォンに関する回想〜
ギアナへと逃げ延びるウォン

カラト「奴はDG事変を生き延び、ギアナへと逃げ込んだ………本来ならば、捕まえて裁きにかけるところだったが、奴には意外な力があった………」

洞窟内のDG鉱脈を感じるウォン

部下「DGダストの鉱脈を見つける能力………おそらくはDG細胞に冒された副作用だったんでしょう」

DG細胞に冒されたウォン
その体の一部がDGダストと融合する

カラト「ああ、そして我々にとっても魅力のある力だった………何せあのギアナは我々のセンサーでさえ調査困難な地………そこでリングコーナーで彼を閉じ込め、首相の名の下に自治権を与え、発見したDG鉱脈を採掘するハンターを集めさせた………」

ハンターたちを従えるウォン
その姿はかつてのネオホンコン時代に戻っている

部下「我々にとっては一石二鳥………ですが、新しく問題が………」
カラト「そうだ………最近の採掘量の減少から、どうやらギアナのDGは残り僅かではないかと推測され始めた………」

採掘されたDG
搬入ユニットの中のDGダストは明らかに少ない

カラト「もしそれが事実ならば、ウォンの役目は終わる………改めて奴の処分を考える必要がある………」
部下「だが、それに気づいたウォンは必ずバリアを突破する手を考え、DGパワーで再び世界に打って出る!」

ガンダム軍団を率いギアナを出るウォンのイメージ

×      ×      ×

部下「それは何としてでも阻止せねばなりません!」
カラト「だからこそ、ここでドモンが取り込まれたのはまずい!とにかく何としても先手を打たねば!!」

頷き、宇宙からギアナを見下ろすカラト

カラト「こうなった以上………潜入させたスパイの情報だけが頼りか………!!」

●夜

街のはずれにモニュメントとなっているシャイニングガンダム

明かりが無く、暗い工場で修理中のジュニアたちのガンダム
工場に明かりが戻る

エイチ「おっ?停電終わったな」
工員「ああ、よくあるんだよ」
エイチ「もしかしてギアナって最近エネルギー不足?」
工員「さあね〜〜〜」

興味のない工員

エイチ「まぁええわ、ほな、あんじょう頼むで〜〜〜」

工員たちに挨拶して走り去っていくエイチ
ドヤ街の中で食料を買い、シャイニングガンダムへと向かっていく

エイチ「ごめんやで〜〜〜ウチらのガンダム修理してる間、宿代わりにさせてもらうで」

コクピットへ駆け上がるエイチ

エイチ「おまっとぉさん〜〜〜晩飯や〜〜〜………………って、あれ?」

見るとジュニアは眠ってしまっている

ジュニア「………………」
エイチ「何や、寝てるんかいな………」

ふと思うエイチ

エイチ「ま、しゃあないか………せっかく珠のありかがわかったと思たら、よりによってやからな〜〜〜」

ジュニアにシーツ代わりの布をかけてやるエイチ

エイチ「気持ちはよおわかる………ウチかてあのアホんだら親父、どないしたろかっちゅうとこやもん………ほんま情けのうて情けのうて………」

エイチも眠くなり、瞳を閉じてしまう
その横で少しうなされるジュニア

×      ×      ×

〜ジュニアの夢〜
一面に花が咲き誇る空間

声「南西が西へ………」
声「南西が…西へ」
声「南南東を63………」
声「南南東を…63………」
声「そうだ………なら次は?」
声「28を北北西へ………」

言葉に合わせ拳を繰り出し、構えを作る人影
演舞をしている二人
東方不敗と幼い日のジュニア(4歳)である
その演舞の中に二人の会話が聞こえる

東方不敗「名は《輝珠掌上(きじゅしょうじょう)》………この演舞を忘れるな………更に一手一手の音を聞け」
ジュニア「………音を??」

父親の演舞を憧れの瞳で見つめるジュニア
父の後を追って演舞を始める

東方不敗「そうだ………そして、その意味を………」

微笑む東方不敗

●深夜

ジュニア「父上!!」

飛び起きるジュニア

ジュニア「………………」

夢だった事を認識するジュニア

ジュニア「またいつもの夢か………」

ふと見るとエイチも寝ている

ジュニア「………」

自分の布がエイチがかけてくれたものだと悟り、エイチにかけ直す
コクピットから出るジュニア
腹に刺さったままのマスターガンダムの腕に飛び移り、その手の上に立つ

ジュニア「………………」

夜の工業地帯の輝きに包まれたギアナが美しくも見える
ふと見ると、マスターガンダムの手がかすかに輝いている

ジュニア「??」

ガンダムの手の外装パネルを探り見る

ジュニア「エネルギー??シャイニングは完全に空っぽだったけど、こっちはかすかに残っているのか??」

外装パネルを外して中を見るジュニア

ジュニア「でも………DG細胞は完全に死んでるな………」

安堵するジュニア

ジュニア「………」

その中で静かに演舞を始める

ジュニア「中央のゼロより始まりて………」

腕と足を流れるように動かすジュニア

ジュニア「南を86………」
「続けて西南西へ5………」
「返すその手で南が42手………」
「北の21………上方、卯は南西へ456から378」

演舞を進めるジュニア
その終わりの型が近づいてくる

ジュニア「後は、天に16、地に8方………」

続けようとするジュニア
だが、次の動きに入れない

ジュニア「………ダメだ………この後がやっぱり思い出せない………」

息を整えつつ思案する

ジュニア「あれから12年か………」

寂しげにつぶやくジュニア

ジュニア「父上を最後に覚えているのは、いつも見るあの夢だけだ………」

夢を思い出すジュニア

ジュニア「でもいつも途中で終わってしまう………それに演舞にはまだ別の何かがあったはずなのに…どうしても思い出せない………それに………」

困惑するジュニア

×      ×      ×

〜夢のイメージ〜
花が満開の空間

×      ×      ×

ジュニア「………あれは一体どこだったんだろう………」
思い耽るジュニア
その瞬間、ギアナ中に悲鳴が響き渡る

悲鳴「!!!!!!!!!」

悲鳴に気づき見ると、ギアナの幾つもの場所が不思議な輝きを放っている

ジュニア「あれは??」

驚き見ると、輝きの中に東方不敗の姿が浮かんでいる

×      ×      ×

ハンターたち「と、東方不敗???」
「本当だ!」
「生き返った??」
「そんな馬鹿な!!」
「じゃ、これは幽霊か???」

驚くハンターたち

×      ×      ×

首相官邸

ウォン「あぁぁああああ!!!!!!!」

一際高い悲鳴をあげるウォン

ウォン「せ………先生!!まさか私を恨んでの???」

あまりの驚きに動けなくなってしまう

×      ×      ×

宿舎の中で驚き見るドモン

ドモン「これは………??」
東方不敗「!!!」

ドモンに向かって拳を振り下ろす東方不敗の幽霊

ドモン「むん!!」

思わず拳を受けるドモン
だが、拳は素通りしてしまう

ドモン「これは………??」

そのまま、次の奥義の型を取る幽霊
だが、幾つかの型を取ると消えてしまう

ドモン「………師匠………」

何かの予測をつけるドモン

 

続く……